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 ラグーンと、ヤシの木に彩られた白浜が長く延びるバンタオビーチ。

 ここは計画的につくられた、プーケット屈指の高級リゾート地でもある。極上のヴァカンス、その物語の始まりを「バンヤンツリー ヴェヤ プーケット」で体感する。


世界のスパを変えた伝説のリゾートへ

◆Banyan Tree Veya Phuket(バンヤンツリー・ヴェヤ・プーケット)

 その美しい風景からは想像もつかないが、ここは19世紀をピークに錫の採掘場として栄えた場所だった。活気あふれる一方で、錫や薬剤が土壌を汚染し、鉱山が閉鎖された後は、草木は生えず、人や動物が住むことさえ困難な荒地になってしまったという。

 そんな見放された土地の改良を決意し、土壌を再生し蘇らせた立役者が、バンヤンツリー・グループの創立者夫妻だ。強い信念を持ち、根気強い作業を続けた結果、一帯は有数のリゾート地に変貌。夫妻は1994年、この地にホテルを誕生させた。それが「バンヤンツリー・プーケット」だ。

 リゾートの代名詞となったのが、伝統的な東洋療法に基づき、ホリスティックな観点からアプローチするスパ。タイ古式マッサージやハーブボールなどアジアの伝統的なセラピーを駆使し心身の健康に働きかける手法は、スパ業界に新風を吹き込んだ。後に世界23カ国に62軒の施設を展開し、スパ界を牽引する存在となったのは、周知のとおり。

 スパをリゾートの中核としてとらえ、究極のウェルネスライフを提供する姿勢は、ブランド名にあぐらをかくことなく、今も進化し続けている。新型コロナウイルスによるパンデミックの最中にあった2022年には、従来のリゾートの隣に、ウェルビーイングに注力した新たなブランド、「バンヤンツリー・ヴェヤ」もオープンした。

 “ヴェヤ”とはサンスクリット語で“織る”という意味。その名の通り、ヨガマスターや自然療法医などが集まって、チーム体制でゲストのウェルビーイングをサポートしている。

 ヴェヤでのウェルネス体験は到着前から始まっている。まず、ストレスレベルや運動習慣などをメールで問診。チェックイン時に専門家からコンサルテーションを受け、その結果をふまえたアクティビティが提案される仕組みだ。

 アクティビティは英語で行われるが、国籍を問わず参加できるよう、それぞれの分野に精通した専門家が、シンプルな言葉でゆっくり丁寧に、時に手書きの図やイラストを交えてレクチャーしてくれるので分かりやすい。その熱心さからは、ここを訪れたゲストには生涯を通じて健康でいてほしいという、彼らのプロ意識が伝わってくる。

 奇跡が刻まれ伝説が始まった地は、まさにその葉で旅人を休息させる“バンヤンツリー”(菩提樹の仲間)のごとく、今も世界中の旅人を癒やし続けている。ここでは日常を忘れてゆったりと、その頼もしい葉の下に身を預けるとしよう。

2023.04.18(火)
文=芹澤和美(Journal House)
撮影=志水 隆

CREA Traveller 2023 vol.2
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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