中野 しかし妥協って、言うのは簡単ですが……って、「中野信子の人生相談」なのに自分の話をしてしまうという。
南 どうぞ、どうぞ。
「まず、自分が幸せになったら他者を幸せにできるのだ!」
中野 私、なんか、かわいそうな人が好きなんですよ。
南 わかる。私は困っている人に惹かれる(笑)。
中野 わかる、わかる(笑)。
南 男性は女性の内面と外見のギャップに引いてしまうということですが、私は逆で、思っていたのと別の表情を見ると、そのギャップにすごく惹かれてしまう。強そうなのに実は困っているという人を見ると、なんとかしてあげようって思ってしまいます。
中野 果歩さんはそうですよね。文章も書けるし、女優としても活躍されていて、人の気持ちに入っていく言葉選びや振る舞いがもうできあがっているじゃないですか。誰かを助ける喜びって何にも替え難いものがあります。
ただ相手の側は、果歩さんのおかげでだんだん立ち直ってくると、自分も助けたいのに果歩さんは何でもできてしまうし、自分にも力があると認めてほしい気持ちが勝ったり、自分で何事もできるものだと思いたくなり始めるのかもしれませんね。
南 そのとおりです(笑)。友だちがアドバイスしてくれました。私は強そうに見えて意外に謙虚だという人に弱いけれど、困っている人は困っているときだけ謙虚なのであって、いつも謙虚なわけではないって。
中野 なるほど。謙虚が一時のものなのか、いつもそうなのかということですかね。
南 私は学習したの。困っている人ではなくて、今、幸せである人を見つけたほうがいいということを。今幸せだという状態のほうが、謙虚に振る舞う必要もないし、その人本来の姿を見ることができるでしょう。
たとえば、その人がお金に困っている状態だったら、お金がないわけだから使えるはずもない。本来のその人のお金の使い方も堅実なのかどうかはわからないわけで、金遣いが荒いのかもしれない。お金の使い方というのは、その人の品性を表すから、それを知るのは大事ですよね。
2023.04.02(日)
Text=Atsuko Komine
Photographs=Hirofumi Kamaya