そんなときでも客観視する自分がもうひとりいて、さあ難題がやってきましたけどどうする? みたいに自分がどういうふうに乗り越えていくのかをウォッチしているんですよ。私はか弱そうな見た目とのギャップがあるということを言いたかったのだけれど……。
中野 人間には、誰かを助けたり守ったりすることで自分を確認するところがあります。男性は特に、強くあれ、という社会的メッセージを受けながら育ってくることが多いので、相手が本当に強いと戸惑ってしまうんでしょう。
南 日本男性にそういう人が多いのでしょう。
中野 日本だけでなく現代社会では一般的にそのようです。
南 ということは、か弱そうに見えたから手を差し伸べたけれども、意外にこの女は強いぞとわかったら、その手を引いてしまうのか。
中野 そうかもしれません。俺の入り込む余地はないな、と自信をなくしかねない。果歩さんの内面と外見のギャップによって起こりがちな現象でしょうけれど、多くの女性の悩みでもあると思うんです。相手のために、自身を弱く見せる必要が本当にあるのか? と。
相手のために無理して自分を弱く見せるくらいなら、ひとりで伸び伸び生きたい。ひとりでいる心地よさを選びたい、ひとりのほうが合理的だと考える女性は潜在的に増えつつあると思います。
南 ひとりになるも、パートナーを得るも、自分で選び取ることが大事ですね。人の心は移ろうものだから2人で分かち合えるものが永遠にあるかといったら、そうではなくなっていくこともあるし、同じように成長していけばいいけれど、人の成長の速度というのは一人ひとり違う。だからひとりの人とずっと一緒にいるというのは、大変なことですよ。
中野 日常的に妥協が必要ですもんね。私自身は決裂しがちなタイプだと思うんですけれども、たまたまパートナーが寛容なので今のところうまくいっています。
南 いいなあ。それは宝くじの大当たりだと思います。宝くじは買わないと当たらないから、信子さんは買って当たった人、選び取った人ですよ。
2023.04.02(日)
Text=Atsuko Komine
Photographs=Hirofumi Kamaya