まだ折り返したばかりなので、本当に予定通りにいくかどうかは分からないが。
年齢はこれで決まった。後はどういう性格づけにするか。
一つ考えたのが「猪突猛進にしない」である。
私の作品のシリーズ主人公には、猪突猛進、自分勝手、周りが見えない、唯我独尊タイプが少なくない。チームワークを重視して、仲間と協力し合って事件解決に向かう、というパターンは例外的だった。
この辺、自己分析すると、昔からのハードボイルド好きが背景にある。ハードボイルドの基本は、やはり一匹狼の探偵だから、一人で暴走するしかないわけだ。
とはいえ、こういうキャラばかりでは、似たような話ばかりになってしまう。そこで岩倉は「待ったの岩倉」にすることにした。
あなたの職場にもこういう人、いませんか? 会議などで何となく方向性が定まりそうになった時、「ちょっと待って」と言って反対意見を出す人。大抵疎まれるのだが、その指摘が当たっていることも多い。少し引いた立場から見ると、物事のマイナス面が見えてきたりするものだから……そのせいで会議は長引いてしまうが。
警察の仕事はミスが許されないが、やはり組織、しかも徹底した上意下達の組織であるが故に、反対意見が出にくいという特徴もある。そんなところに頻繁に「待った」を言える人間がいたら面白いのでは、と考えたのがきっかけだ。
そして、この「待った」がミスを防ぐきっかけ、警察の捜査としては最終防衛線になるということからついたシリーズタイトルが「ラストライン」である。ただし、やはり岩倉自身が暴走してしまうことはある。心に染みついたハードボイルド好きは、どうしても拭い去れないものですね。
もう一つが記憶力だ。
どんな仕事でも、抜群の記憶力は絶対に役に立つ。しかもこと事件に関してだけ、異常に記憶力が良ければ、刑事としては最高の武器になるだろう。というわけで、腕っぷしが強いわけでもない岩倉に、怪物的な記憶力という能力を付与した。ただし仕事以外では役に立たない記憶力で、私生活では「ちょっと大丈夫か」と思えるぐらい抜けているのだが。
2023.03.31(金)
文=堂場 瞬一