昨年7月、KDDIが起こした大規模通信障害により、スマートフォンの通信ができなくなった。電話やメール、LINE、SNSが使えなくなるだけでなく、緊急通報もできなくなるなど、社会的に大きな影響を与えたのは記憶に新しい。

 そんななか、通信業界では「万が一、障害が起きたときにも通信を維持できる取り組み」を進めつつある。

KDDIとソフトバンクではじまる「デュアルSIMサービス」って何?

 2月2日、KDDIとソフトバンクは「デュアルSIMサービス」を3月中にも開始すると発表した。

「デュアルSIM」とは2つのSIMカードを使えるというものだ。SIMカードとはスマートフォンの内部に格納された契約情報が記録されたICチップのことを指す。

 通常、一台のスマートフォンにはひとつのSIMカードしか格納できない。しかし、最近のスマートフォンでは2つのSIMカードを格納できる機種が増えてきた。

 そこで、KDDIとソフトバンクは、au回線を契約しているユーザーにはソフトバンク回線、ソフトバンク回線を契約している人にはau回線を追加で契約できるようにすることにしたのだ。

 つまり、一台のスマートフォンでau回線、ソフトバンク回線、両方使えるようになる。万が一、au回線が通信障害になってしまえばソフトバンク回線、ソフトバンク回線が通信障害になったらau回線が使えるというわけだ。

 これにより、昨年起きたような大規模通信障害や災害でどちらかの通信回線が使えなくなっても、もう1回線で通信や通話を持続できるというわけだ。

 気になる料金だがソフトバンク宮川潤一社長は「数百円の下の方にしたい」と語っている。

 

デュアルSIMには今でもすでにできるのでは…?

 ただ、最近では、KDDIが月額ゼロ円で回線を維持できる「povo」というオンライン専用プランを提供していたり、それこそ数百円で電話とインターネットが使える格安スマホ会社も数多く存在する。わざわざ、KDDIとソフトバンクがデュアルSIMサービスを提供する意味はあるのだろうか。

2023.02.19(日)
文=石川 温