佐々木俊尚 1961年兵庫県生まれ。毎日新聞社、アスキーを経て、フリージャーナリストとして活躍。公式サイトでメールマガジン配信中。著書に『本当に使えるウェブサイトのすごい仕組み』

【KEY WORD:和食】

 今年9月に政府が「和食;日本人の伝統的な食文化」を無形文化遺産として提案。(1)多様な食材を新鮮なまま使用 (2)コメを中心とした栄養バランスの良い食事 (3)自然の美しさ、季節の移ろいを表現 (4)年中行事と密接に関連 の4点をアピール。登録の可否は12月2日~7日のユネスコの政府間委員会で最終決定される。

日本の食文化が世界の文化遺産に!

「和食」がユネスコの無形文化遺産に提案されています。もし決定すれば、フランス料理や地中海料理、メキシコ料理などとならんで人類の創造性を証明する大切な文化として世界に認められることになります。

 昔は海外で食べられる和食と言えばすしと天ぷらが中心でしたが、最近ではラーメンやカレーなどのB級グルメもよく食べられるようになり、人気を高めています。

 またフレンチやイタリアンなどの料理にも昆布や海苔など和の素材が使われるようになり、また「旨味(うまみ)」も新しい味覚として注目されています。さらに日本のウィスキーが食中酒としてフランスで人気になったり、日本酒の輸出が急増したり、あらゆる場面で日本の食文化が世界を席巻しようとしているのです。

 和食がなぜ人気を呼んでいるのでしょう。最も大きいのは健康的であること。ヘルシーだけど美味しいというのは、アメリカのようにダイエットに悩む人が多い国では重要な要素です。また盛りつけ技術が高く、美しいということもあるでしょう。

 しかし私がもっと大きな背景要素として注目しているのは、世界的に料理が「素材重視」へと進んできていることです。フレンチもかつてはクリームやバターをたっぷり使った濃厚な料理が中心でしたが、1970年代からは軽くて繊細なヌーベルキュイジーヌと呼ばれる潮流が起きました。そしてこの十数年はさらに進化し、素材感を前面に押し出し、素材の味を引き立てるための調理法に工夫がこらされるようになっています。欧州の料理がこのように進んだのは、修業のため現地で働いている日本人料理人や、和食や日本の文化が強い影響を与えるようになったことがあるとも言われています。

 この結果、和食自体の評価がさらに上がり、いまのブームにつながったということなのでしょう。だからこれは一過性のブームなのではなく、和食が世界の食を変えていくという大きな流れになっていくと考えた方が良いのではないかと思います。

2013.11.25(月)

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