父は会社に利用された挙げ句に殺されたのではないか――。瑠衣は不信感を募らせるが証拠はなく、また被害者の身内ということで捜査からも外されてしまう。そんな時、彼女の前に私立探偵の鳥海(とかい)が現れる。鳥海の話に瑠衣は衝撃を受けるが……。

「主人公が“司法を超えた側”に転んでいく過程で、すでに裏の仕事に手を染めている人間がどう接触してきて、どんな影響を与えていくか。また影響を与える人物とはどんなキャラクターなのか、逆算して、主人公グループの第2の人物を作っていきました。

 さらに、裁けぬ者を裁く仕事をするとなると、現代ではどんなテクニック、スキルが必要か。当然、コンピューター、インターネットなどITやデジタル技術に精通している人間が必ずひとりは必要です。そうして3人のメンバーができあがった。

 また今回考えたのは、3人の年代と性別、持っているスキルをバラバラにすることです。普通だったら出会うはずのない3人が出会って、それぞれの技術や得意なことを活かす。本家のドラマでもばらばらの人間がチームを組んで仕事をしますが、そのフォーマットは現代の物語でも利用できますね」

 
 

 中山作品の特徴は、版元もシリーズも違う作品に共通する人物が出てきたり、ひとつの事件が2つの作品で同時進行したりするなど、物語世界がつながっていることだ。

「ありがたいことに僕の読者は版元を気にせず読んでくださることが多いのですが、複数の作品を読むと時系列でリンクしているのが分かりますよ。それはプロットを立てる段階から、頭の中で複数のストーリーが時系列に沿って流れているからできるんです。

 もともとデビューが決まった際、一発屋で終わってしまうわけにはいかないと、1週間で100通りのストーリーを考えました。その時に、こっちではこういう人が動き、あっちにはこの人がいて、という大まかな地図を作りました。あとはそれを、小出しというと語弊があるけれど、出版社からの注文に従って加工して出す、ということの繰り返しでしたね。

2023.02.01(水)