――かねてから草彅さんは「歌も芝居も本格的なレッスンを受けたことがない」と公言されてきました。

草彅 そうですねえ、ええ。

――しかし、韓国語もギターも気が付くといつの間にか習得されていたような印象でしたし、近年の主演映画『ミッドナイトスワン』(20年)においても難易度の高いトランスジェンダー役を見事に演じられていましたが、その苦労はあまり表には出されないという印象があります。そうした姿勢には、もしかするとシャイな人柄というパブリックイメージで知られ、やはり努力を表に見せないという印象があった大杉さんや高倉さんからの影響が少なからず作用していたのでしょうか?

 

草彅 いえ、そうではないです。そもそも漣さんも健さんもあまりに凄過ぎる存在ですから、端からああいう風になりたいと思った事だって一度もないし。

 僕は何かを覚える時、それが楽しければ努力や勉強という感覚が自分の中に全く無いんですよ。もちろん、目上のかたへの礼儀やご挨拶として「学ばせていただきます」と口にしたことはあるけど、本当は人から何かを「学んでやるぞ」という気持ちが僕には全く無い。結果的に学びになっていた、という感じ。

 そういう意味ではちょっと不謹慎だったのかもしれないけど、漣さんとも、健さんとも、ただただ「ご一緒させてもらえて楽しかったなあ」という実感しかない。もしかしたらお二人とも「ウソつけ、教えてやっただろ!?」と怒っていらっしゃるかもしれないけど(笑)。

「お芝居だけをやっていたら、芝居力が落ちちゃう」

――マルチな活動をされている草彅さんですが、近年、芝居への向き合い方や意味合いに変化は生じてきましたか?

草彅 そこは特に変わっていないかな。僕の場合は今までも仕事の範囲を決め込まずにここまで来たし。例えば「お芝居だけをやる」とか、守備範囲を狭めちゃうのはつまらなくて。自分の中では全て繋がっている感覚なので、いろんなことをやっていた方がいい。

2023.01.30(月)
文=内田正樹