他のコンビニはマネできないコストカット

 それだけではない。100円惣菜のパックをよく見ると、フタがラップのようなシールになっていることに気付くはずだ。

「ウチではそれをトップシールと呼んでいます。普通のコンビニやスーパーの惣菜は、トレイに嵌合蓋(かんごうふた)というプラスチック製のフタをパチッとはめて、それだけだと汁が漏れるので、上からシュリンクフィルムを巻いています。以前はウチも同様で容器代だけで約13円かかっていましたが、トップシールにしたら2円50銭になった。自分たちで容器を作っているから削れるところがわかるんです」

 簡単にマネできそうだが、他のコンビニでは、なかなかそうもいかないという。

「小売業界の場合、製造・配送・販売は小売本社とは別の会社が請け負って、その間に壁があるからです。例えばコンビニ本社はメーカーに『〇〇円でこれ作って』と頼んで、容器はメーカー側が用意する。『この値段じゃできません』と言われたら、メーカーとの力関係次第で『だったら他に頼むよ』となるか、『じゃあ値段上げるよ』となるだけです。

 配送や販売についても同様で、上がった分のコストは、商品の値段に転嫁され、消費者が負担することになるわけです」

「削減価値」はコミュニケーションの中から生まれる

 さらに今後、ウクライナ情勢や円安の影響による原材料やエネルギーの値上げの波が、コンビニ業界を直撃する。

「値上げはやむを得ないと思うんです。ただ上げるにしてもその幅を1円でも2円でも安くすることを業界として考えるべきです。例えば小売本社がトップシールの機械に投資して、それをメーカーにリースする方法だってある。あるいは配送方法の効率化を物流業者と話し合うことだってできる。まずは製・配・販の壁を越えて話し合うことですよ」

「削減価値」という「種(シーズ)」はコミュニケーションの中から生まれるのである。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2023年の論点100』に掲載されています。

2023.01.20(金)
文=伊藤秀倫