メインは高齢者と年金生活者
丸谷はここで興味深いデータを示した。セコマの売上の山は、月に何回かある。
「従来は給料日後に最も大きな山ができていました。それが07年になると年金支給日が給料日を上回り、13年になると生活保護支給日が給料日を上回りました。現在の売上の山は、年金支給日→生活保護支給日→給料日の順です」
それは何を意味するのか。
「まさに高齢化社会の縮図です。ひと昔前はコンビニといえば若者の場所というイメージでしたが、今は高齢者や年金で生活している人にとってのライフラインとなっている現実が見えます」
現在、セコマの利用客の実に3分の1を60代以上が占めているという。
「年金収入で生活しているということは賃上げがない。つまりウチに来てくださるお客さんの3分の1は食費や生活費に割ける金額が決まっているわけです。ですから1円でも2円でも安くすることが求められています」
ムダを徹底的に見直す
かといって単に売値を下げていては、企業としての売上が成り立たない。
「そこで原価を下げることによって売価を維持しつつ、我々の儲けを生み出すことが必要になる。それを我々は『削減価値』と呼んでいます。大事なのは、原価は下げても品質は下げないことです」
どうすればそんなことができるのか。
「商品の製造から配送、販売に至るサプライチェーンのどこかにムダなところがないか、を徹底的に見直すんです」
セコマの人気シリーズに「100円惣菜」がある。コロッケやフキの煮物、ごぼうサラダといった一品料理は、どれも120円ほどとは信じられないクオリティで、高齢者にも好評だが、ここまで安くできるのは、セコマがサプライチェーンをすべて自前で持っているからだ。自社農場からの野菜も含めて原材料を極力自前で調達し、自社工場で惣菜にしてパック詰めし、自社のトラックで配送しているから、中間搾取がないのである。
2023.01.20(金)
文=伊藤秀倫