この記事の連載
- サイコーサウナ【前篇】
- サイコーサウナ【後篇】
サウナスは五感で楽しむサウナです
サウナがブームだと言われていますが、いまは、サウナの入り方がなんとなく普及したかな、という時代だと思うんです。僕の『マンガ サ道』もその一助になったとは思いますが、それがドラマ化され映像となってお茶の間に流れた影響は大きく、サウナの中でロウリュをしてその湿度で温まっている姿や、水風呂に入る姿、外気浴をする姿をみなさんが観て、ようやく理解されるようになったんです。
「ととのう」とは、サウナ→水風呂→外気浴というサイクルを繰り返すことで、副交感神経、交感神経を交互に刺激し自律神経を整えていくことなんだなと。あのドラマは「新しい楽しみ」をみなさんに教えたと思うんです。もちろん、サウナにはすごく古い歴史があるし、日本では高度経済成長とともに働く男たちに寄り添ってきた歴史もある。でも、「ととのう」という新たな視点が掘り起こされたことで、現代の若い世代に浸透したと思うんです。しかも、男性だけでなく、女性にも響いた。日本のサウナがようやく変わり始めてきた、いまはそんな時点かなって。
ただ、日本のサウナって、テレビのあるサウナばっかりなんですよ。それは、昭和の健康ランドブームから発生した、要は“レジャーとしてのサウナ”が広がった経緯があるからなんです。だから仕事終わりに体を休めたいと思ってサウナへ行っても、テレビで陰鬱な事件のニュースが流れてきたりする。やっぱり、テレビが点いていたり、明るい照明だったりすると、交感神経が立ち上がりっぱなしになるので、それだとなかなか自律神経が整わない。リラックスどころじゃなくなるんです。
でも、サウナの入り方が浸透するに従い、だんだんみんなわかってきた。テレビはいらない。静かなサウナでリラックスをしたいんだと。
なので、私たちは完全な休息ができる、レストのサウナを徹底的にやることにしました。照明はできるだけ暗く、森の香り、自然の音、静かな音楽、食べ物は体に優しいビーガンフード。五感で楽しむことに特化したサウナをテーマにしたんです。
だから湯船はなく、水風呂だけだし、植栽だらけ。ただ、アウフグースはあります。タオルであおいで熱波を浴びることで交感神経を立ち上げ、アドレナリンを出す方向で血流を促進させる。「静」とは正反対のリラックス方法ですが、これもサウナの楽しみのひとつ。テレビを置くのとはまったく違うレジャーとしてのサウナのあり方。ショーとして楽しむこともできますから。
渋谷サウナス
所在地 東京都渋谷区桜丘町18-9
営業時間 8:00〜24:00
定休日 無休
料金 平日 3,080円〜、土日祝 3,850円〜
https://saunas-saunas.com/
五箇公貴(ごか・きみたか)
1975年東京都北区王子生まれ。プロデューサーとしてドラマ、映画と多岐にわたり作品を制作。代表作に、ドラマ『サ道』、『電影少女』シリーズ、『100万円の女たち』、『湯けむりスナイパー』、映画『舟を編む』、『ゴッドタン・キス我慢選手権』、ドキュメンタリー『田原総一朗の遺言』などがある。
サイコーサウナ
定価 1,760円(税込)
文藝春秋
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2023.02.24(金)
文=五箇公貴
イラスト=タナカカツキ