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 昨年末のオープン以来、サウナーの間で大注目の「渋谷サウナス」。『マンガ サ道』の作者でサウナ大使としても活動するアーティスト・タナカカツキさんが全面プロデュースを手がけたこの施設には、タナカさんの「夢」がめいっぱい詰まっていました。全国の“サイコーサウナ”を取材した五箇公貴著『サイコーサウナ』からタナカさんのインタビューを抜粋してご紹介します。

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9つのサウナと4つの水風呂で都心にいながらサイコーにととのう! 夢しかないサウナ「渋谷サウナス」


自然の音を体で聴いてリセット

 目指したのは森林浴です。都会のサウナって、日本の場合、植物を全然使わない場所が多いんです。植物を使わないサウナは世界的にまれ。本来のサウナは、湖畔や河原にあるもので、蒸されて汗をかいたら川や湖でクールダウンするのが基本。でも、川や湖のない街中でも森林浴を簡易的にやりたい、だから水風呂に浸かる、ハーブやヴィヒタなどの植物を多用しできるだけ森林浴に近い環境を作る、それがヨーロッパのサウナの考え方。ですから、私たちのサウナもなるべく森林浴に近づけようと考えたんです。

 そのためには植物に囲まれることもそうですが、音にもこだわりました。やっぱり、都会の音、例えば、車、電車、選挙カーの音、サイレンの音、そういった人工的な音に実はすごくストレスを感じているんです。本来、自然の音を聴き、自然のリズムと同調することでリラックスするように人間の体はできている。

 もちろん、人工的な音に慣れるということはあるんです。ただ、自覚しないところで疲労はどんどん蓄積され、それによって脳が疲れてしまう。いわゆる脳疲労といわれるものです。原因不明の体調不良は脳疲労からきているのではないか、といわれているんです。

 ですから、人工音の中で無自覚のままストレスを溜めてしまっている人たちに、自然の音の気持ちよさをサウナスで提供できたらいいなと。ただ、渋谷の街中で森林の音は難しい。そこで、自然の音と同じような周波数の音楽を流すのはどうだろうと。サウナに対応できるスピーカーごとちゃんと作って、気持ちいい音を流そうと。そういうことでできたのが、サウンドサウナ。音楽はドラマ『サ道』でもお馴染み、とくさしけんごさんに作ってもらったんです。

2023.02.24(金)
文=五箇公貴
イラスト=タナカカツキ