無事に集合時刻には間に合ったのですが、私が電車で来たと知った編集長には呆れられてしまいました。
「え、その恰好で電車乗ったんですか!? どうしてタクシー使わなかったんです?」
冷静に考えるとおっしゃる通りです。
さっき落としちゃったからな、どっか壊れてないかな、と思って控え室で刀の状態を確認していると、「お世話さまです」という声と共に控室の扉が開きました。
入って来たのは坂上さんで、「あ、今日はよろしくお願いします!」とこちらがにこやかに挨拶をすると、顔を引きつらせて足を止めてしまわれました。
どうしたんだろう――と一瞬怪訝に思ってから、今の自分の姿に思い至りましたね。
その時の私は、坂上さんに背中を向ける形で、ちょっと鞘(さや)から引き出す形で刀身を眺めていたのです。
あちらからすると「カチコミ前みたいな雰囲気の女と目が合ってしまった」というわけでして、その正体が誰であれ「やべえ!」となるのは当然でした。
「ち、違うんです! 違うんです!」
めちゃくちゃ弁解しましたが、たとえ玩具であっても、刀の扱いは気を付けよう……と思った一件でした。
帰りは諦めて――というか、私が「でも帰りは職質受けても時間的に余裕ありますし」とか言っていたら、文春さんが問答無用で呼んでくれたので、ありがたくタクシーに乗って帰宅しました。とっても楽で良かったです。
あ、あと一点配信の反省点なのですが、何故か私の机にだけどら焼きが載っています!
あれ、別に私がお腹空き過ぎていたわけじゃなくて、文春100周年の焼き鏝(ごて)が押された特別などら焼きだったんです! 時間があったら紹介しようね、とお二人と言い合っていたのですが、結局触れる時間もなく配信が終わってしまいました。
額賀さんも坂上さんも途中で本の陰にしっかり隠していたらしいのですが、私はうっかり出したままだったので、配信の途中から私の机の上でどら焼きと玩具刀が共存する絵面になっています。
2023.01.06(金)
文=阿部 智里