作家の平松洋子さん、コラムニストの門上武司さんは深い知識に加え、食と人、暮らしを繫ぐ食文化の提唱者。安定した老舗の味から気鋭の若手職人の味まで100年先の未来にも繫がる贈りものをご紹介いただきます。
今回は和菓子篇です。見目麗しい和菓子で伝えるのは季節ごとの風情。忙しい日常に安らぎをもたらしてくれる和菓子の魅力にうっとり。
季節の便りとして、京の味のお裾分けとして贈る銘菓
門上 永楽屋の琥珀は柚子が旬の時期に贈る季節ものです。この季節にあの人に贈ったらええなあと想いながら。
平松 こういうお菓子を男性から贈られるのはいいですね。ドキドキします。
門上 柏屋の季節のかさねは総料理長の松尾英明さんが、手作業でつくる季節の風情を写したお菓子です。彼は理学部を卒業していて、お菓子の手描きの設計図を見せていただいたときはびっくりしました。
平松 こういう緻密できちんとした味のお菓子をいただくとその方の心の奥に触れたような感じがします。
門上 鍵善良房の濤々は麩焼きせんべいと大徳寺納豆という非常に京都らしいお菓子です。こし餡に混ぜた大徳寺納豆の塩味がええなあと。
平松 見るからにおいしそう。
――おふたりが贈りものをなさるときに大事にしていることはありますか。
平松 贈る方のご家族や年齢、環境、季節などいつもすごく考えます。自分の経験から、おいしいものでも暫く残ったままで、味が落ちていくのを感じるのはなかなか辛いもの。できるだけそういう風に思わないで済む、追い込まないものを贈ることは、大事なことかもしれません。
門上 確かにそうですね。あとは、そろそろあれが旬かな、という季節感も大切にしています。自分でも楽しみですしね。
宝石のように美しい 菓子で季節を伝える
#01 永楽屋「琥珀 柚子」
京のあまからやとして親しまれる京佃煮・京菓子の名店「永楽屋」を代表する菓子。琥珀とは寒天と砂糖でつくられた和菓子のこと。寒天に季節の味と香りを封じ込め、丁寧に炊き上げた柚子の皮がほんのりと透けて見える宝石のような美しい和菓子。柚子は上質なことで知られる徳島県・木頭地区で栽培される木頭柚子を使用。
「柚子の豊かな風味とぷるんとした食感が心地よい」(門上さん)
永楽屋
所在地 京都府京都市中京区河原町四条上ル東側
電話番号 075-591-5131
営業時間 10:00~19:00
定休日 無休
賞味・消費期限 30日
https://www.eirakuya.co.jp/
※通販可/永楽屋本店
2023.01.22(日)
Text=Motoko Saito
Photographs=Naruyasu Nabeshima
Cooperation=UTUWA