この記事の連載

 開業から10年、一致協力を意味する「ウツグミ」の精神で、島とともに歩んできた「星のや竹富島」。後篇は、ぐっすり眠った翌朝の過ごし方、島に伝わる「命草(ぬちぐさ)」を取り入れた朝食やアクティビティを通して、島の文化・風習に触れる楽しみをご紹介します。


朝の爽やかな風を感じながらよんなー深呼吸、そして朝食を

 満天の星空の下で行う「てぃんぬ(天の)深呼吸」(前篇参照)で深い眠りにつくと、翌朝の目覚めもスッキリ爽快。日の出前に部屋を出て、「よんなー(ゆっくり)深呼吸」に参加してみましょう。

 参加者は、いったん「ゆんたくラウンジ」に集合してから、歩いて3分ほどのアイヤル浜へ。水平線の向こうから昇る朝日を全身に浴びながら、ゆっくりとしたストレッチと軽い有酸素運動を行い、体を目覚めさせます。地球の鼓動に体がシンクロするような感覚が、クセになりそう。

 お待ちかねの朝食は、冬限定の「畑人(はるさー)粥朝食」をチョイス(1人 4,235円)。冬の畑でよく育つハーブや野菜「命草(ぬちぐさ)」を取り入れた和定食です。畑人とは、そうしたハーブや野菜が育つ畑で働く人という意味。

 かつて医師がいなかった竹富島では、薬効のあるハーブや野菜がまさに「命草」であり、食べるだけでなく、染織や民具の素材としても活用されてきたそうです。

 メインのお粥は、島の食を支えてきた粟、麦などの穀物を昆布だしでコトコト炊いたもの。長命草やハンダマ(水前寺菜)などの命草と甘い油味噌を自分ですりつぶし、お粥と一緒にいただきます。

 卵黄の醤油漬け、冬瓜の紫蘇漬け、ゴーヤの佃煮といった小鉢3種もお粥によく合うおかず。そしてたんぱく質は、車海老や沖縄産の白身魚(ミーバイ)、島にんじんの包み煮。袋を開けた瞬間の湯気もごちそうで、体にしみいるような魚介の旨みに癒されます。

 2017年、「星のや竹富島」では、島の農業に詳しいおじいから島で古くから作られている作物の種を譲り受け、敷地内の畑で栽培し継承を目指す「畑プロジェクト」を開始しました。種子取祭で神に捧げる粟をはじめ、さまざまな命草も育て、お菓子や料理、畑作業の体験アクティビティで提供しています。

 冬季限定の宿泊プラン「命草ぬったーるん滞在」(2022年12月1日~2023年2月28日。1人 60,500円。宿泊料別)では、命草を用いたチャイ作りや食事、命草玉スパトリートメント、命草を使った香り高いお風呂やサウナを満喫できます。

2022.12.01(木)
文=伊藤由起
撮影=榎本麻美