10月20日第3話放送直前、ドラマ「silent」公式Twitterに動画で登場した目黒蓮。最後に「ありがとうございます」を手話で表現するなど、もはや手つきが自然になっている印象を受けた。

 中途失聴者の役を演じるにあたり、手話の練習も重ねてきたのだろう。発声が限られる役柄でありながら、その表情やまばたきの回数などで、複雑な心情を雄弁に語っている。この表現力は、回を増すごとに研ぎ澄まされていくだろう。

 

目黒蓮は恋愛ドラマの新王子となるか?

 ドラマ「silent」がここまで話題を呼び、若い世代にとどまらず50代前後の層からも支持を得ている理由として、目黒蓮の「切なさや共感を呼び起こす演技」も挙げられるだろう。今後予定されている公開作も恋愛を主軸にした作品が目立つ。恋愛ものといえば目黒蓮、と呼び声が高まるのも予想しやすい。

「silent」初回放送直前のインタビューにおいて、主演の川口春奈が、相手役となる目黒蓮の印象に触れている。影と色気を併せ持っている、陽と影どちらの演技もできると評する言葉に対して、一度でも彼の芝居を見たなら簡単に同意できるだろう。

 10月27日に放送された第4話で焦点があてられたのは、紬の恋人・湊斗(鈴鹿央士)だ。病気を理由に音信不通となっていた想と久々に再会し、高校時代の旧友たちと引き合わせるため奔走する湊斗。彼には彼の、言葉にしがたい複雑な思いがあるのは3話の後半で明かされた。それと同じくらいに、「気を遣わせたくない」とギリギリまで逡巡する想の心境も、そう簡単には言い表せないものだったろう。

 ドラマ「silent」ヒットの所以には、「14才の母」(2006年)「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(2016年)などヒットドラマを世に送り出してきた敏腕プロデューサー・村瀬健や、ヤングシナリオ大賞から発掘された若き脚本家・生方美久の手腕もあるだろう。

 しかし、今後の映画・ドラマ界を担うであろう、目黒蓮の表現力も大いに関係しているはず。アイドルとしてはもちろん、役者・目黒蓮のファンも確実に増えていくだろう。

2022.11.17(木)
文=北村 有