里山が育む郷土の滋味に大満足!

 かつて、冬になると雪に閉ざされてしまう地域も多かった福井。それゆえ、県内には古くからの食文化が今なお受け継がれていて、近年ではとても貴重なものとして、改めて注目を集めています。

 今回、訪れた若狭エリアにも独自の美味がいっぱいで、とくに山間の名田庄は、里山の滋味にあふれる美食の里でもあるのです。

 この地の冬の名物といえば、ぼたん鍋 (猪鍋) 。昭和20年に初代が鮮魚の行商からスタートしたという「料理旅館 南川荘」は、福井の奥深い食の世界を体感できるとっておきの場所です。

「これはなんですか?」

「すこですね」

「……?」

 「すこ」とは、赤ずいき (八つ頭の茎) を乾煎りしてから酢漬けにしたもの。古くから報恩講や祭事の際に欠かせない料理だったそう。素朴な味わいで、不思議とあとを引きます。

 また、名田庄は、若狭から京都へと海産物を運んだ、西の鯖街道に位置する集落。そこで肉厚の鯖寿司やバッテラ (鯖の押寿司) もぜひ。

 そして、いよいよお目当てのぼたん鍋が登場。

 現在、名田庄にはぼたん鍋をふるまうお店・旅館が4軒。それぞれ個性が異なり、南川荘では、お椀に自家製赤味噌が。これを具材の旨みをたっぷり含んだスープで溶いていただきます。

 野山を駆けめぐって育った猪のお肉は、えもいわれぬおいしさ。赤味噌の風味がいい感じで絡み合い、ごぼう、ねぎ、こんにゃくなどの具材も絶妙。何杯もおかわりしたくなります。

 身体がポカポカと温まり、おなかも大満足。まさに至福のひとときを満喫できます。

 さらに、このエリアの見どころとして外せないのが、「若州一滴文庫 (じゃくしゅう いってき ぶんこ)」。郷土が生んだ作家・水上勉さんがこの地の子供たちのためにと私財を投じて建設した文化施設です。

 開館当時から広く一般にも開放されていて、館内のギャラリースペースのほか、竹人形文楽のミュージアムなどが必見。

 海の絶景と新鮮な幸、そして美しい里山文化と、魅力がいっぱいの嶺南・若狭エリア。2024年春には、北陸新幹線が延伸されて、注目が集まること間違いなし。

 まだ見ぬ日本を探しに、ぜひ出かけてみて!

その先の敦賀への旅、訪ねたところの情報はこちらに

◆レインボーライン

所在地 福井県三方上中郡若狭町気山18-2-2
電話番号 0770-45-2678
営業時間 冬季9:30~16:30 (時季により変動あり)
料金 山頂公園1,000円、駐車場500円
http://www.mikatagoko.com/

◆岡三屋 彩かさね

所在地 福井県三方上中郡若狭町生倉18-19-2
電話番号 0770-45-3377
料金(1名) 13,300円~ (1室4名利用の場合、入湯税別途)
https://irokasane.com/

◆暦会館

所在地 福井県大飯郡おおい町名田庄納田終111-7
電話番号 0770-67-2876
開館時間 9:00~16:00 (水曜休館)
料金 200円
https://ooi-koyomi.info/

◆料理旅館 南川荘

所在地 福井県大飯郡おおい町名田庄三重52-18-1
電話番号 0770-67-2406
営業時間 11:30~14:30、18:00~21:00 (不定休)
宿泊料金 (1名) 22,000円~ (夕・朝食付き)
https://minamigawasou.jp/

◆若州一滴文庫

所在地 福井県大飯郡おおい町岡田33-2-1
電話番号 0770-77-2445
開館時間 9:00~17:00 (火曜休館、祝日の場合は翌日)
料金 300円
https://itteki.jp/

2022.11.28(月)
文=矢野詔次郎
写真=上田順子