スプレマティズムは物質的な世界を再現的に描くものではなく、無対象な芸術表現といわれます。しかし、それは全く何も表さないということではなく、感覚を色・フォルム・質感で抽象的に表そうとする新しい試みでした。

 シンプルな形状ですが、機能性を求める合理主義的な考え方とは相反します。それを意識してか、人の手で描いたのが分かるよう塗り跡を残し、輪郭線は細かなブレが確認できます。

 この絵に、マレーヴィチはどんな感覚を表現したのでしょうか。また、あなたはどんな感覚を得たでしょうか。動的な感じ、浮揚しているような、また、俯瞰して見るような感覚があるかもしれません。そんな風に感じながら見始めれば大丈夫。そして、こんなの分からない、と思っても大丈夫。マレーヴィチはそれも想定ずみだと書き残していますから。

INFORMATION

「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション」
京都国立近代美術館にて2023年1月22日まで
https://ludwig.exhn.jp/

●展覧会の開催予定等は変更になる場合があります。お出掛け前にHPなどでご確認ください。

2022.11.03(木)
文=秋田麻早子