――ちなみに、ゼロ文字押し正答をした本庄絆と、主人公の三島玲央は、徳久さんや田村さんがモデルなんですか?
小川 そういうわけじゃないですね。本庄にも三島にも、特定のモデルはいなくて。
――そうだったんですね。以前、文春オンラインで田村さんにインタビューしたとき、「正答したときの『ピンポンピンポーン!』という音の気持ちよさが忘れられない」と話していました。それと同じような内容が小説内にあったので、てっきり……。
小川 田村くんのそのエピソードは僕も知っていますよ。彼や徳久くんから話を聞いているなかで、「クイズの一番の魅力は『ピンポン!』という音だな」と感じていて。それをこの作品の“拠り所”にしようというのは、執筆前に固めたことなんですよね。そういう意味では、田村くんの話が小説の原型になった、と言えるのかもしれません。
競技クイズは『HUNTER×HUNTER』に似ている
――徳久さんや田村さんから話を聞いていくなかで、ほかにどんな部分が競技クイズの魅力だと感じましたか。
小川 ひとつは、将棋のように、トップレベルの知識を持った人たちによる“究極の頭脳戦”を楽しめるところ。ただ僕は、競技クイズについて勉強していくなかで、クイズには将棋と異なる面白さがあるなと気付きました。
――クイズならではの魅力がある、と。
小川 クイズの場合、興味がない人にとっても、出されている問題の中にどれかひとつは知っていることや、自分の人生に関わっていることがある。だから、完全に自分と無関係ではないんです。
それにクイズなら、どんな人でも、場合によってはクイズ王に勝てるチャンスがあるんですよ。なぜなら、クイズ王も知らないことが世の中には無数にある。もしその問題が出されれば、クイズ王は答えられないわけですから。もちろん何問も勝ち続けるのは無理ですけど、1問だけなら可能性があると思います。
だから『君のクイズ』でも、読者が1問でもいいからクイズ王と同じタイミングか、もしくはクイズ王よりも早く正答できるといいなと思って。そして読者には、正答したときの「ピンポン!」という音の気持ちよさを味わってほしい。だから難易度のバランスも考えて問題を作りましたね。
2022.11.06(日)
文=「文春オンライン」編集部