そして、そろそろ次の段階ではないだろうか。その次の段階は、「いろいろな性の人が普通にいるんだ」と自然と世間に受け入れてもらうことだ。必ずしもオネエっぽい見た目や言葉遣いをしている必要はないと思う。厳密にはそうなってほしい。自分の周りの誰が同性愛者でも、誰にどんなアイデンティティがあっても、おかしくはないんだと多くの人が気づけば、さらに生きやすい世の中になるのではないだろうか。

『アウト×デラックス』(フジテレビ系)や『5時に夢中! 』(TOKYO MX)でもそうだが、僕はテレビで「私は実はゲイです」とは、なるべくは言わないようにしている。

「好きなタイプは? 」のようなたわいもない話題の中で、さりげなく男性俳優の名前を挙げるようにしている。アウト×デラックスでは野村周平さんと答えたが今は町田啓太さんだ(笑)。アウト×デラックスで男性俳優の名前を言ったとき、「え? 」と共演者たちは反応したが、いつかそれが普通の会話になればいいと思っている。

 アウトはグッドの裏返し、弱点は簡単に強みに変えられるというコンセプトを持った、前衛的な番組でこのような表現をさせてもらえたことには感謝している。

 

 ニコ生は誹謗中傷に心が折れて、21歳でやめてしまったが、やっぱり自己承認欲求はあって、会社員をしながらもTwitterなどでちょこちょこ発信はしていた。僕のTwitterを見た芸能関係者から何度かスカウトもされたけれど、タレントは全部断っていた。何度もDMでタレントを勧めてくる人があまりにしつこいので、こうなったら一回直接会って断ろうと、池袋の居酒屋で話すことに......。

 どんなに熱心にタレントを勧められ、チヤホヤされても、僕は「やる気ないんで」「いいです」「興味ないです」を連発して、席を立った。すると、僕が居酒屋を出てすぐに、その人から「ブラス、俺を見て興奮しただろ。勃起してたな」とメッセージが来た。「はぁ!? 全然タイプじゃねぇし! 」と腹が立って、言い返すために居酒屋に戻ってキレたのだが、彼は僕を引き留めるには暴言を吐いて戻ってこさせるしかないと思ったらしい。つまり、彼の策にハマったのだ。

2022.10.26(水)
文=小原ブラス