かつて桑の木やリンゴの木を育んだ長野の大地に、今一面に広がるのはブドウ畑。盛り上がりを見せる東信・南信の地で、気鋭の造り手たちが醸すワインに出合えるワイナリー&レストランを訪ねた。

 上田市を中心とし、東御(とうみ)や小諸に広がる東信エリア。古くからの城下町であり東御は果物の生産も盛んだ。そして今、日本中から熱い視線を集めているワイナリーが多い。

 今回は東信州エリアの注目ワイナリーを3軒ご紹介。


この地にワイン文化を作った東御地区ワイナリーの先がけ

◆リュードヴァン

 上田駅から車で30分。小高い丘の上の、大きな木の下の青いルノーが「リュードヴァン」の目印だ。

 「リュードヴァン」代表そして醸造家の小山英明さんがこの業界に飛び込んだのは29歳のときのこと。

 エンジニアとして働いていた彼は、ある日飲んだ南仏ローヌ地方の赤ワインに魅せられ、ヨーロッパの人々のような、ワインが暮らしに根付く生活を日本に作りたいと醸造家の道へ飛び込んだ。

 より理想を求め、勤めていたワイナリーを辞めた2005年に出合ったのが、継承者を待つ東御のリンゴ畑だ。

 「リンゴはもうだめだ。ワイン用ブドウの畑に再生してくれないか」、そう語る農家のおじいさんが最後に作ったリンゴを食べたら、とても美味しかったと小山さんは当時を振り返る。

 ただ“美味しい”だけじゃだめだ。産業と文化としてワインをこの地に定着させたい。

 そう決心し、土地を開墾、ブドウを植え、’10 年にはワイナリーを開業。

 最初にリリースした高品質なワインが評判を呼び、東御の自家醸造ワイナリーのパイオニアとして注目を集めた。

 「ワインは食事とともにあるもの」という考えからレストランを併設し、自社のワインとランチを提供。

 テイスティングできるカウンターも作り、訪れるゲストを笑顔で迎える。

 この場所で美味しい料理を食べ、グラスを傾ければ、「ワインのあるハッピーな毎日、いいよね」と語る小山さんの言葉が胸に響くだろう。

2022.08.26(金)
Text=Misa Yamaji
Photographs=Wataru Sato、Asami Enomoto

CREA Traveller 2022 vol.3
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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