世代を繋ぐ「道」を気づかせてくれる年下とのセッション

――『こちらあみ子』では、大沢一菜さん・森井勇佑監督といった、本作で映画デビューを飾る面々とタッグを組みました。井浦さんご自身は次世代と作品を創ることのどういった部分に面白さを感じますか?

 基本的に、他人とのセッションは年上でも同世代でも、年下でも本当に楽しいです。僕の中に年齢の区別はなくて、あるとしたらそれぞれのジェネレーションで見てきたものの違い。そこが面白いんです。人の「何を語るか」を形作るのは、どの世代で何を見て、何を楽しんで、どう生きてきたか、ですから。

 もちろん「この世代だからこう」が決まっているわけではなく、それぞれに系譜がある。作品を通して他人とセッションをすると「なぜこの人はこう感じるのか」が伝わってきますし、逆に「自分自身が当時見てきた/感じていたものってこういうことだったんだ」という気付きもあります。

 『こちらあみ子』のような年下とのセッションは、世代を繋ぐ「道」を気づかせてくれるのが面白いんですよ。

 僕が上の世代に刺激を受けて学んだり影響を受けたりしたように、気づかないうちに僕のやっていたことを下の世代が見て消化している。こっちはとにかく夢中で走り続けていたから、自分がどんなふうに歩いたり走ったりしてきたかをあまり知らないけど(笑)、いつの間にか道になっていたんだと気づかせてくれます。

 「二個前の世代がやっていることは知らないけど、目の前の世代にすごく影響を受けた」という人も、実は間接的に二個前の世代の影響を受けているわけだから面白いですよね。途切れているように見えて、途切れていない。年齢が離れていても、脈々と共鳴しあう人同士の間には共通して流れている要素があるのがすごいなと思うんです。

――ご自身のキャリアが積み重ねていくなかで、また新たに見えてくるものもあるでしょうね。

 そうですね。いまは47歳で、本作のようにお父さん役をやるようになったり、現場でも年齢的に真ん中で、上世代と下世代をつなげていく立場になったり。下手するとスタッフ・キャスト全員の中で最年長になったりすることもあるなかで、若い才能は監督・技術チーム・俳優に限らず、どんな分野でも面白いです。

 無鉄砲だからこそできる表現もあれば、たくさん映画を観て学んだからこそ生まれてくるものもある。どっちが良い・悪いじゃなく、どっちもいい。新しい才能と出会えるのは幸せですし、『こちらあみ子』では大沢一菜のデビューに立ち会えたのは自分にとってものすごく光栄でした。

2022.07.06(水)
文=SYO
撮影=山元茂樹
ヘアメイク=NEMOTO(HITOME)
スタイリスト=上野健太郎(KEN OFFICE)