そうやって「芸人を続ける材料」が増えてきたことで、区切りを設けない、もしくは区切りを伸ばす芸人がこれからますます多くなり、その存在が目立つようになるのではないだろうか。
なすなかにしは若手から刺激を得て飛躍
おじさん芸人のタイプは、大きく分けるとふたつ。長い芸歴を生かして安定感たっぷりに物事を進行させるものと、良い大人なのに全力でバカをやって笑わせるもの(錦鯉の長谷川はまさにこのタイプ)。
前者で今もっとも脚光を浴びているおじさん芸人が、なすなかにしだろう。那須晃行は41歳、中西茂樹は44歳だ。特に定評があるのがロケの運び方のうまさ。2021年5月17日放送『笑神様は突然に…』(日本テレビ系)のロケバトルの回では、ロケの達人・宮川大輔が「なすなかにしは何かに対しての答えを持っているところがすごい。最強のコンビ」と絶賛。内村光良(ウッチャンナンチャン)も「(ロケの)教科書を見たような気がする」と舌を巻いたほど。
2001年結成の同コンビは、デビュー時期からベテランのような卓越したしゃべくりを披露し、実力派と称されていた。所属する松竹芸能では当時、ますだおかだ、オセロ、TKO、アメリカザリガニらが台頭していたが、なすなかにしにかかる期待はそれを上回っていた。しかし東京進出で躓き、さらに「いまぶーむ」への改名も悪循環に(ちなみに改名は、ますだおかだ・岡田圭右の助言だ)。やがて長いトンネルに入った。ただ2015年に始まった『こそこそチャップリン』(テレビ東京系)のネタコーナーへの出演で、全国区へ近づいた。
雑誌『日経エンタテインメント! お笑いspecial 2018』(2017年/日経BP)のインタビューで中西は「若手に目を向け過ぎやないかって思うときありますもん。もっと上にいいのいるぞって」と、このときからおじさん芸人としてのアピールをおこなっていた。一方、同書内で二人は「楽屋で後輩と話をするのが刺激的。勉強にもなる」と語っている。彼らはキャリアにおごることなく、常に若々しい感性を取り入れ、時代の動向を追いながら芸のスタイルを作っていった。その姿勢がようやく実を結んだのだ。『ラヴィット!』(TBS系)での彼らの活躍を観ていると、すべてが噛み合ったベテランコンビがいかに強いかよく分かる。
2022.05.22(日)
文=田辺ユウキ