しかし放送終了後の冬、『トリック』のDVDが発売されるとテレビドラマのソフトとしては異例の売上を叩き出す。そして2002年1月11日には第2シーズンの『トリック2』が同じ金曜ナイトドラマ枠でスタート。

 平均視聴率も同じ深夜枠ながら前シーズンを上回る10.6%と二桁を記録。同枠では当時の最高視聴率だった。同年11月には映画『トリック劇場版』が公開され、全国放送ではなかったドラマにもかかわらず興行収入約13億円のスマッシュヒットとなった。

 翌2003年には第3シーズンの『トリック ~Troisième partie~』が、遂に深夜枠から夜9時の木曜ドラマ枠に進出。初回放送で17.8%の視聴率を記録し、全10話の平均視聴率も15.6%であった。2005年の名取裕子をゲストに迎えた『トリック 新作スペシャル』ではなんと24.7%視聴率を記録。これはシリーズ史上最高視聴率である。

 その後2014年までに3本のスペシャルドラマ、4本の劇場版が作られるなど、『トリック』シリーズは14年続き、ファンに愛され続けた。

なぜ、『トリック』はここまで愛されたのか

 インターネットが普及しはじめた当時、ドラマと連動したホームページはファンとドラマを繋ぐ重要なツールであった。ドラマ制作陣の日記や新エピソードの裏話など、放送時以外でも『トリック』ワールドに浸れたことが、これだけ長く愛された要因でもあるだろう。

『トリック』出演によって仲間由紀恵は、主演ドラマ『ごくせん』でも「笑いに関してはお任せします」とスタッフに言われるほどコメディエンヌとして開眼して人気に。その後も大河ドラマ『功名が辻』、映画『大奥』などに主演しブレイクする。

2006年、『大奥』制作発表会見での仲間由紀恵 ©文藝春秋
2006年、『大奥』制作発表会見での仲間由紀恵 ©文藝春秋

 また阿部寛も役の幅を増したことで“怪優”と呼ばれ、硬軟自在の俳優として再ブレイクを果たした。それからのふたりの活躍は説明するまでもなくご存知の通りだ。

 この記事の準備として『トリック』の全作品を改めて見直してみたが、初回エピソードでのキャラクターから僅かな変化はシリーズに見られるものの、14年間の時間の流れを感じないほど各作品が同じであることに驚く。

2022.05.12(木)
文=すずき たけし