
「界 別府」のコンセプトは「ドラマティック温泉街」。窓から見える景色や時間帯によって変わる館内の情景は訪れる人の気持ちを心地よく揺さぶり、滞在しているあいだじゅう楽しい体験に出合わせてくれます。前篇では「界 別府」に到着してから間もなく繰り広げられるおもてなしの数々をご紹介しましょう。
別府湾を臨む「湯の広場」には温泉情緒あふれる手湯と足湯

JR別府駅から徒歩10分、高速バスの停留所からは徒歩2分ほどという、好アクセスの「界 別府」。明治時代に旧別府港が開港して以来、日本全国から多くの湯治客が訪れた、歴史ある北浜地区に位置しています。
レセプションは2階。洞窟のようなエントランスの暗がりから、黒塗りのエレベータに乗り込み、扉が開くと一転、まばゆいばかりの別府湾を背景にした「湯の広場」。 ドラマティックな逗留の幕開けです。
広場の一面は、湯桶をモチーフにした「手湯」。温泉が生活に密着している別府では、町中にこうした手湯があり、人々がそこで休憩したり、お湯を囲んで話し込む姿が見られるそう。手に受ける湯の温かさに、旅の疲れも解きほぐされていくようです。



「界 別府」の設計から、照明をはじめとするインテリア、館内サインのピクトグラムといった細部に至るデザインを手掛けたのは、建築家の隈 研吾氏。
館内には、屋外・半屋外空間がたくさんあり、和紙のちょうちんが照らす石畳の路地や、土産物ショップ、実験室や夜店をイメージしたパブリックスペース、ライブラリーなどが混在しています。
館内にいながら、温泉街のしっとりとした空気や風、そぞろ歩きのワクワク感を満喫することができるのです。




2022.03.25(金)
文=伊藤由起
写真=榎本麻美