学生時代の私は、自分の親が恋愛するとか、そういうことはありえないと決めつけていたけれど、先生のもとにきてたくさんの人に会い、みんな、現役で恋愛をし、仕事をしているその若さを見て、年齢にとらわれていた自分がいかにつまらない人間だったか実感した。

 縛られた世界にいない先生とその周りの人たちはいつも魅力的だった。批判を浴びることがあったとしても、「何が悪い?」と言い返すようなエネルギーも備えていると思う。

 魅力的で素敵な大人たちにたくさん会えたことは、とても貴重な経験だった。先生と一緒にいなければ、絶対会えないような人たちばかりだったから。

「でもあの子、わかっているよ。私が普通のおばあさんではなくて、何かしている人だってこと」瀬戸内寂聴と11年をともに過ごした女性が明かす、先生の“最後の恋人” へ続く

2022.03.19(土)
文=瀬尾まなほ