誰に対してもフランクな先生
先生は仕事でたくさんの人と対談をしてきた。私もその場にいつも同席させてもらっていた。
その中には先生にとって「初めまして」の人も、もちろんいる。でも先生は誰に対しても、普段からそうだが、フランクで話しやすい雰囲気を作る。相手がまったく違う職業の人であっても、分け隔てなく会話を盛り上げる。
だいたい対談前に資料として本や映像などをもらうのだが、先生は忙しくてちゃんと見ていないこともあった。
ある日、ジャニーズの方が、雑誌の対談のため寂庵を訪れた。王子様のようなルックス、昔から変わらないその美貌やスタイル。私より年はだいぶ上だけれど、やっぱり実物もカッコいい!
その方はやはり緊張されていて、口数も少なく、先生が質問を一方的にしていたように思う。そりゃ先生の前だと緊張するし、しゃべれなくなるのもわかる。しかも、そもそもおしゃべりなタイプでなくクールな感じだから。
先生は、その方が帰った後、あまり話ができなかったからか、不満そうだった。もう少し込み入った話を聞きたかったのだろう。奥さん以外に女はいるのかとか、そういうゴシップ的な話も含めて。でもそんなことを対談でしゃべってしまったらイメージが壊れるし、大変なことになるだろう。
対談したその数日後、先生はその方が出版された自伝を読んだ。色々と苦労されてきたことがわかり、先生は「あんなに苦労しているとは思わなかった。幼少期から大変だったそうよ。もっと話を聞いてあげればよかった」と後悔していた。先生、対談前に読んでおこうよ……。
見た目がどんなに美しくとも、話が面白くなかったり、先生にとって何か魅力を感じられなければ、なかなか先生のお眼鏡にはかなわない。
偉い人は偉そうにしなくても偉い
必ずしも、不良だから良いということでもない。その人に才能があったり、何かに秀でていたりすると、それは先生の好評価へつながる。「才能がある人が好き」と先生は言っていた。
2022.03.19(土)
文=瀬尾まなほ