絵は、感じ方次第で印象を変えるから不思議

――ところで、松坂さんはSNSで長田さんが描いた日岡(『孤狼の血』シリーズで演じた)の絵もアップされていましたよね。

 はい! 先日、『孤狼の血 LEVEL2』でヨコハマ映画祭の主演男優賞をいただいたときに、真作が「おめでとう!」と言ってスマホに送ってきてくれたんです。で、今日その原画をくれたんですよ。

――なんと、それはうれしいですね! おめでとうございます。

 ありがとうございます。『孤狼の血 LEVEL2』を観た後、彼の中で急にわっと湧いてきた、おりてきたらしいんです。「本当に10分ぐらいで描いた!」と言っていたので、感情が真作の中で出てきたんでしょうね。この絵は、なんかちょっと狂気じみたところもあれば、半分まだ残っている部分もあるという(日岡を表している)。それを絵にして僕に届けてくれたことが本当にうれしかったので、「Twitterにあげていい?」と聞いたら「もちろんいいよ!」と言ってくれたので、Twitterにあげました(笑)。

――「よかったよ」、「素晴らしかったね」という言葉ではなく、1枚の絵に気持ちを集約することが芸術家の表現ですし、ぐっとくる感じがしますね。

 絵って本当に不思議なものですよね。言葉は、ある種、ちょっと限定的なところもあるじゃないですか。それとは別に、絵はその人の感じ方によって印象を変えるし、正解があるようでないというか、その人の中に正解があるように受け取ることができるので。感想が絵になってくると、もう、言葉がいらないんですよね。

――今おっしゃったようなことは、当然、『まろやかな炎』にも言えることですよね。

 ええ。エリマキトカゲのマロと炎が、心の写し鏡みたいな感じになっていて。だからこそ、ページをめくるたびに、その炎のかたちがどんどん変わっていったり、かたちというものがなかったり、それはもう、そのときの読み手の心そのものなんだな、と思っています。

2022.03.11(金)
文=赤山恭子
撮影=平松市聖
スタイリスト=カワサキタカフミ
ヘアメイク=Emiy