選択肢というものは本当に無限にあるんだろうな
――これまで作品の製作やプロデュース業などはしていなかった松坂さんですが、今回クリエイティブなことに目を向けたきっかけはあったんでしょうか? 当然、長田さんとご一緒するから、というのが大きい理由だとは思いますが。
そうですね。おっしゃっていただいたように、真作との関係性だったからこそ、だと思います。年齢がほぼ同じなので、歩んできた年月としては、ほぼほぼ同じじゃないですか。その中で、僕は俳優、真作は絵本作家とお互い違う道を進んでいたけれど、今回こうして交わってひとつの色になっていくことができたのは、自分の中では本当に楽しかった。真作とだったから、より強く感じることができたと思います。
やってみて気づいたんですが、表現においては、かたちというものに捉われる必要はないんだなと。それが絵本なのか、映像なのか、朗読なのか、何かを表現して何かを伝えていくことは、別にひとつにこだわらず、かたちをどんどん変えていっても伝わるものは伝わるし、完成するものは完成する。表現の選択肢というものは本当に無限にあるんだろうなと、今回のコラボレーションで気づかされました。
――そうした意味でも、今回の絵本は俳優業の作品とはご自身の中で意味合いや位置づけが異なりますか?
そうですね。映像で何かを残していくこととは、またやっぱり違うベクトルですね。なんか……僕らの仕事って、本当にすごい孤独なんですよね。もちろんいろいろな人が携わって完成するものですけれども、俳優業だけに関して言えば、僕の場合は「これでいいんだろうか」と自問自答したり、日々反省したり。……何て言うんだろう、なかなか人と共有できないような悩みを抱えながら、その作品に向き合っていったりするんです。だから、孤独といえばある種孤独なんだな、と思っていて。
でも、それは絵本作家の長田真作を見ていても、「彼も孤独だな」と思うんです。彼の場合は、本当にゼロからひとりで作り上げる作業をずっと続けているので。孤独同士のふたりが共存というか、協力し合ってひとつのものを作るという。そういう試みが、こんなにも新鮮な風を吹かせてくれるんだと思いました。
2022.03.11(金)
文=赤山恭子
撮影=平松市聖
スタイリスト=カワサキタカフミ
ヘアメイク=Emiy