キプロス島のそこかしこにネコ、ネコ、ネコ!

 地中海に浮かぶ美しい島、キプロスに上陸してみれば、あっちにもこっちにもネコ、ネコ、ネコ! 我が物顔でノシノシと美しい石畳を歩いている。

 首輪がないから野良なのか? それにしてはずいぶん毛並みがいい。不思議に思って玄関先の階段にネコと並んで座っているおじいさんに尋ねてみると「うちのネコだよ」と背中をなでる。しかし、目と鼻の先の店先で椅子に腰かけているおばあさんは「その子は私の子よ」と同じネコを呼び寄せて目を細める。

 「どっちのネコなの?」と首を傾げる私に、現地のガイドさんが「日本のような飼いネコという概念がない代わりに、キプロスには“マイキャット文化”があるんです」と教えてくれた。お気に入りの野良ネコがいれば、それはもう“マイキャット”。それぞれ好きな名前で呼んで、毎日、エサをあげてなでてあげるそう。

 ネコたちも幾人ものパトロンを抱えることで、誰かが旅に出たり、引っ越したりしてしまっても食いっぱぐれの心配はないようだ。筆者が訪れたのはコロナ禍の前であったが、中庭で堂々とひっくり返って寝ていても、カフェで客の足元に丸くなっていても、追い出されるのを一度も見たことがない。家の中には入れてもらえないが、大事にされているのは良く分かる。

2022.02.25(金)
文・写真=白石あづさ