――まだ解けないですか?
永野 もういい歳だからさすがに解けるかと思ったら、解けないですね。なんでだろう。穏やかな顔にならないんですよ。いまだに人と違うことを意識してしまう。
マヂカルラブリーなど「地下芸人」への期待
――一方で、昨今は地下ライブで実力を磨いていた芸人が注目を浴びつつあります。インディーズシーンで蠢動し、孤高のカルト芸人と呼ばれた永野さんから見て、正統派とは違う芸人が求められているといった雰囲気は感じますか?
永野 それはあるなって感じますね。うちの事務所のランジャタイもそう。 あと、ずっと一緒にライブをやってきて、ずっと面白いと思っていたモグライダーが去年のM-1決勝に進出したのは、すごいうれしかったですね。こいつらが売れないっていうことは、俺には見るセンスがないんだなって思っていたくらい面白いコンビだったから。
マヂカルラブリーとかランジャタイ、モグライダーって、アングラの面白い部分を上手にマスに伝えてくれる器用さがあるから、めちゃくちゃ期待してます。僕は、ガチもんすぎて世間には重すぎると思います(笑)。ポップな形で、アングラやカルトの見方を変えてくれるのは、彼らだと思う。
――永野さんは、ご自身の笑いに対しては信念を曲げないですけど、同じ事務所の後輩からは「とても的確なアドバイスをしてくれる」と評判ですよね。そのプロデュース力を、なぜ自分に向けないんですか?
永野 自分に置きかえちゃうと、本能が先行しちゃうんですよね。芸人仲間や後輩には不幸になってほしくないじゃないですか。だから、アドバイスをしてしまうというか。自分じゃないから冷静に見れる。自分事になると、破滅の道を進みたくなる(笑)。
いまさらなんですけど、90年代にデビューしたヒップホップグループのウータン・クランにハマっていて。90年代だから音が不穏なんですよ。過去の記事を調べて読んでいたら、彼ら自身が、「俺たちはヒップホップ界のニルヴァーナだ」って言っていた。やっぱりそこに戻ってくる自分がいるんですよね。
2022.02.07(月)
文=我妻 弘崇