時代とともに贈りもののスタンダードも変わります。「Z世代」の新しいギフトのお作法を、博報堂 ミライの事業室の牧島夢加さんに教えてもらいました。若者の思考回路や消費行動から見えてくるのは、他人への気遣い、リスク回避、サステナブル、そしてSNSでした。


貸し借りは即日リセット!?

――若者の消費行動に詳しい牧島夢加さんに「Z世代」のギフト事情をお伺いします。Z世代の定義は1990年代後半~2000年代前半生まれということですね?

「はい。ただ、私たちの調査対象はマス層より先進的な行動や価値観をもつ、大学生から社会人3年目が中心です。そんな先進的なZ世代の思考と消費行動、そして26歳でZ世代でもある私自身の体験も踏まえ、未来のギフト行動の兆しをお話ししたいと思います」

――では、まず、Z世代は好んで贈りものをするのでしょうか?

「します、します! ギフトの機会はかなり頻繁で、誕生日、バレンタインなどはもちろん、6~7年前にLINEギフトが登場して以来、スタンプ感覚でプチギフトを贈るのが当たり前になりました」

――スタンプ感覚!?

「贈ったギフトはLINEのトーク画面に表示され、コンビニ引き換えの電子チケットなら100円程度からあるので、やや割高な使い捨てスタンプの感覚というか。Z世代のギフト消費調査では、テスト前にノートを借りたり、先輩に奢ってもらったりしたら、その日のうちにLINEギフトを贈って貸し借りをゼロにする、いわば『貸し借りリセットギフト』行動が見受けられました」

――なぜ、急いでリセットを?

「ジェンダーレスといわれるなか育った世代で、彼氏彼女でも割り勘派が多い。そんな価値観に触れてきた側面が強く、フラットな関係を好むのではと推察します」

――ちょっとしたお礼のLINEギフトでは、何が人気ですか?

「王道はコーヒーチェーンのドリンクチケットです。待ち合わせに遅刻するときに『何か飲んで待っていて』という使い方をする子もいました。ただ、人気のドリンクチケットは500円以上するので、相手を恐縮させても申し訳ないからと、コンビニスウィーツや缶ビールなど150~300円くらいの価格帯をよく使うという声も聞きます」

――若者も気を遣ってますね……。

「“申し訳ない”は、Z世代の思考を読み解くキーワードかもしれません。実際、Z世代の方と話していてよく耳にします。ギフトであれば、意に沿わないものを贈ってしまったら、喜ぶ演技をさせるのは申し訳ない、と考えるんですよね」

――LINEギフトを覗いたら、商品が充実していて驚きました。

「この1年ほどでギフトの種類がかなり増えた印象です。私もオンラインギフトチケットばかりではなく、直接商品が手元に届く配送ギフトで、友人や同僚に入浴剤やアイマスクを贈りました」

――別にLINEギフトでなくても買える? と思ったりしますが。

「LINEの配送ギフトは、貰った側が住所を入力して受け取るので、たとえば同僚とか、親しいけれど住所まで聞くのは……という関係の人に贈りやすいんです。コロナ禍で、同僚や同級生に簡単に会えない人も多いですから。そして、オンラインショッピングとはいえ偽物のリスクが感じられないことが、選ばれやすいポイントだと考えます」

――確かに、各ブランドが直接出店している感じで、偽物を贈ってしまう心配はなさそうですね。

「オンライン通販では偽物や不良品で痛い目に遭ってきたZ世代もいて、たとえ有名な通販サイトでも、信用できる出品者かSNSやネット検索で調べています。本物を間違いのないところで買いたいという志向は強いです」

究極まで贈る手間が省けるLINEギフト

LINEのギフトサービス。スターバックスのチケットに代表される電子チケット(eギフト)は店舗でスマホの画面を表示して利用できる。スウィーツやコスメなどの配送ギフトは貰い手側が住所を入力してから発送されるので、贈り主は相手の住所を知らなくても品物を贈れて、住所は開示されない。eギフトは電子チケットの有効期限、配送ギフトは貰い手側の配送先指定期限がある点に注意。

2021.12.19(日)
Text=Yuki Imatomi
Illustrations=Natsuki Suyama

CREA 2022年冬号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

贈りものバイブル

CREA 2022年冬号

贈りものバイブル

特別定価900円

「CREA」2022年冬号の特集は、「贈りものバイブル」。待ちわびていたその日をより特別なものにしてくれる、そんなとっておきの贈りものを集めてみました。