私事で大変恐縮ながら、先日、長らく暮らしてきた大阪から東京へ引越しをした。

 女ひとりでの引越しということで色々と不安はあったのだが、引越し業者の人にきてもらって見積もりをお願いすると、荷物の運び出しや搬入はもちろんのこと、もう使えなくなった冷蔵庫と洗濯機の処分までサービスでやってくれるというので、とても助かるし、スムーズに引越しを終えられる見通しが立って、精神的にも余裕がある状態で引越し当日を迎えることができた。

 前回は大阪府内での近距離の引越しということで友人に車を借り、すべて自分で荷物を運び出し、何往復もして深夜に搬入作業をするなど大変苦労をしたので、こんなに楽に引越しができるなら今後も絶対に業者にお願いをしようと固く心に誓った。ありがとう引越し屋さん。

ここまでは良かったんですけどね

 見積もりにきてくれた社員の方は大変良い方で、少しでもこちらの不安を解消しようと気遣ってくれるなど、誠心誠意、丁寧に対応をしてくれた。ありがとう、担当の●原さん。

 しかしながら引越し当日、すべての荷出しを終えて3年間住んだ家にさよならをしたあと、猫ちゃんを連れて新居へ向かい、搬入作業に立ち会ったときに事件は起きてしまった。

「こちらで緩衝材を巻いて梱包します」と伝えられていたはずの掃除機(購入したて)が、むき出しのままガチャガチャと音を立てて室内に運び込まれてきた。しかもデスクの足部分(鉄製)と一緒にダンボールに雑に突っ込まれていたために、トラックの中で互いにガツガツとぶつかったのだろう、掃除機は傷だらけになり、一部塗装が剥げてしまっていた。

 この時点で相当ショックではあったものの、直ちに問いただすことで作業中の業者の方のモチベーションが下がってしまうのを恐れ、まずはすべての荷物が安全に運び込まれるのを待ってから、最後に「掃除機がですね……」と伝えることにした。荷物の搬入は数人がかりで行ってくれていたが、部屋に入ってくるのはほとんど男性一人で、実質密室に二人きりということもあり、こちらが注意をすることで逆上されるのが嫌だったというのも本音だ。

2021.11.09(火)
文=吉川 ばんび