新作舞台では“妖怪ヒーローショーが繰り広げられる”

 舞台を観慣れていない人からすれば、チケットの取り方、観劇のマナー、何か予備知識をつけていった方がいいのか、などなど、舞台観劇には不安がつきものかもしれない。でも、劇団☆新感線の舞台ほど、頭を空っぽにして楽しめる舞台はそうない。

 派手でパワフルで、真面目で不真面目。くだらない部分はくだらなく、アツいところはアツく。舞台ならではの娯楽性をとことんまで追求している。そんな新感線の新作で、ついに中村さんが主演を果たす。いのうえ歌舞伎「狐晴明九尾狩」で、陰陽師・安倍晴明を演じるのだ。

「脚本を読んだときは、『妖かしあってこその都』というテーマが、すごく面白いなと。朝廷の人たち、権力者たち、市井の人の他に、半端者とか妖かしのようなよくわからない生命体もバンバン登場する。楽しい妖怪ヒーローショーがそこかしこで繰り広げられます」

 やってみたいのは、とても力の抜けた安倍晴明像だという。

「時代劇って、どうしても、『ここはこういうシーンですよ』と役者の熱量で引っ張っていくことが必要になってくるんですが、それをやりながらも要所要所で、力みのなさを出していきたい。

 その方がキャラクターの魅力、作品全体のメリハリやうねりを感じてもらえるんじゃないかと。主人公としては、あんまり見たことがない、どこか放っておけない、不思議な愛嬌をもった晴明になればいい」

 今回の役は作家の中島かずきさんが、中村さんをイメージして書いた、いわゆる“当て書き”。自分が求められて呼ばれているからといって、何か特別なものをやろうと思ってはいないそうだ。

「僕のもっている雰囲気やテンポ感が、さらっと、ふらっと、飄々といのうえ歌舞伎に馴染んでいければいいですね。伝統ある劇団の作品にある核の部分と、僕のニュアンスをどれだけ混ぜられるか」

 新感線の舞台の登場人物は、カッコつけてないのにカッコいい。本来はダメな人たちだけれど、根っこのところで一本筋を通し、その誇りや信念を守るために、命の火を燃やすのだ。

「しかも今回の作品は、時代へのエールみたいなものが結構盛り込まれているんじゃないかなと思う。今の世の中に対するいろんなメタファーが含まれていて、その辺も軽やかに運べたらいいですね」

2021.10.16(土)
Text=Yoko Kikuchi
Photographs=Satoru Tada
Styling=Arata Kobayashi
Hair & Make-up=Emily

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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