伊勢神宮と日本初の公設海水浴場

 伊勢神宮へ参拝する前には、まず二見興玉神社へ。古来より、ここで潮水を浴びて身を清める、「浜参宮」が行われていました。いわば、禊(みそぎ)です。今ではこの神社に参拝し、「無垢塩祓」を受けることが、禊の代わりになるそうです。

 海に沿って西へ、夫婦岩表参道を進むと、松林に守られた二見浦海水浴場があります。砂浜&松林、“白砂青松”のザ・日本のビーチです。「日本の渚百選」にも選ばれています。

 実はここ、明治15年に日本で初めて開設された国指定の海水浴場。当時、レジャーというよりも“浴治”という医療が目的だったとか。和製タラソテラピーでしょうか。

 また、大正天皇は幼少期、伊勢まいりの賓客をもてなした宿「賓日館」(現在は資料館、国指定重要文化財)に滞在した際、ここで水泳を覚えたとの逸話も残っています。

 さらに西へ進むと、伊勢神宮の125社のひとつ、「御塩殿神社」があります。

 御塩の神様がまつられていて、神宮で使用するための「堅塩」が2,000年以上、変わらぬ製法で作られています。境内の裏手には、海水を汲む場所と塩を焼く建物があり、これは登呂遺跡にみられる建築様式だそう。訪れた時、人が誰もいなかったせいか、まるで弥生時代にタイムトリップしたような気分でした。

 そして、いよいよ伊勢神宮へ。

 最初に天照大御神のお食事をつかさどる神、豊受大御神がまつられている外宮から参拝します。そして外宮から約5キロ離れた、天照大御神がまつられている内宮にお参りします。

 外宮も、内宮も、正宮では日頃の感謝を伝えます。お願いごとをするのは正宮ではなく、ご神霊のもうひとつの面である、行動力のある“荒御魂(あらみたま)”をまつる宮で。外宮なら多賀宮、内宮なら荒祭宮です。

 神代のできごとと現実が、ゆるやかに交じり合う伊勢。ギリシャで神話を身近に感じた感覚と、どこか似ている気がしました。

二見浦

●アクセス JR参宮線の伊勢市駅から二見浦駅まで6~9分。または伊勢・二見・鳥羽を周遊するバス「CANばす」を利用する方法も。
●おすすめステイ先 神宮会館
https://www.jingukaikan.jp/

古関千恵子 (こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/4世紀あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/

Column

古関千恵子の世界極楽ビーチ百景

一口でビーチと言っても、タイプはさまざま。この広い世界に同じ風景は一つとして存在しないし、何と言っても地球の7割は海。つまり、その数は無尽蔵ってこと? 今まで津々浦々の海岸を訪れてきたビーチライター・古関千恵子さんが、至福のビーチを厳選してご紹介します!

2021.09.25(土)
文・撮影=古関千恵子