③村田紗耶香と現代美術作家とのダイアローグ(対話)

 芥川賞受賞作家・村田沙耶香の世界観を現代美術家との対話という形で表現した「村田沙耶香のユートピア_“正常”の構造と暴力」展が神宮前のGYRE GALLERYで8月20日(金)~10月17日(日)が開催されます。

 展示は『消滅世界』(2015年12月、河出書房新社)、『コンビニ人間』(2016年7月、文藝春秋)、『生命式』(2019年10月、河出書房新社)の3作品を題材として、デヴィッド・シュリグリーと金氏徹平によって新たに制作された作品を含め構成されています。展示作品に加えて、現代音楽家の池田謙が『コンビニ人間』から得たインスピレーションを基に書き下ろした音楽作品“convenient”を会場内の一室で公開、私たちが普段生活している“正常な世界”のベールを剥ぎ取り、顕在化させています。

 中でも興味深いのは、初公開となる村田沙耶香自身による絵画(4点)とドローイング(1点)、コラージュ作品(1点)。「学生時代の授業で与えられた課題を前提にして制作したもの」(村田氏)とのことですが、その作品群からは彼女の表現の原点が感じられるようです。さらには、小説作品を執筆するにあたってのノートなども展示、村田沙耶香の作品世界にどっぷりと浸ることができます。

 村田さんのファンはもちろん、ダイバーシティを謳いながら一方で均一化、一般化を強いる現代社会に少し疑問を感じている人に是非とも行ってみて欲しい展示会です。

村田紗耶香の世界観_“正常”の構造と暴力性

会場 GYRE GALLERY
所在地 東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE3F
会期 8月20日(金)~10月17日(日)

④ものすごく楽しみにしている『OLD』

『シックス・センス』が公開されたのは僕が中学校1年生の時でした。確か。冬休みだったかしら。子どもの僕には耐えられずクラス中に結末を言いふらして顰蹙を買ったことを憶えています。

『アンブレイカブル』、『サイン』、『ヴィレッジ』と、私はシャマラン観てました。中学、高校の思春期にバッチリハマっていたのです。大どんでん返しの物語。少し大人びた友人なんかは「シャマランなんて」と言う人もいましたが、物語のダイナミックさだけでなく、映画全体に漂う異様な雰囲気にすっかり魅了されていたのです。なんかあるぞ感というか。

 正直、微妙だなと思う作品もけっこうあれど、『ヴィジット』など「流石シャマラン、突っ込みどころ満載、そこにしびれる!」というところが最大の魅力。今回の『オールド』も楽しみで仕方ありません。「そのビーチでは、一生が一日で終わる」。このキャッチコピーを見たら、期待しちゃいますよね。「んなことないだろ、おいおいおい」と思いながら、怒涛のように駆け抜けるシャマラン節。

 8月27日(金)から公開、今から楽しみです。

『OLD』

出演:ガエル・ガルシア・ベルナル(『天国の口、終わりの楽園』、『バベル』)
   ヴィッキー・クリープス(『ファントム・スレッド』)
   アレックス・ウルフ(『ジュマンジ/ネクスト・レベル』)
   トーマシン・マッケンジー(『ジョジョ・ラビット』)ほか
原案:「Sandcastle」(Pierre Oscar Lévy and Frederik Peeters)
監督・脚本:M.ナイト・シャマラン
製作:M.ナイト・シャマラン、マーク・ビエンストックほか
アメリカ公開:2021年7月23日(金)予定
配給:東宝東和
© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

公式サイト:https://old-movie.jp/
公式Twitter:@uni_horror

⑤MUSIC GOES ON 最新音楽生活考

 月刊誌『レコード・コレクターズ』の人気連載「ミュージック・ゴーズ・オン 最新音楽生活考」が待望の単行本化です。「敬愛するミュージシャンはいったいどんな音楽を聴いてきたのか?」そんな根源的な知りたい欲求をこれ以上ないほど満たしてくれます。

 以前、この連載で『押井守の映画50年50本』を紹介したときに押井氏の「映画はただ記憶だけを頼りに、繰り返し語られるべきものなのです」という言葉を紹介しましたが、それは音楽でも同じ。語ることで音楽も再び現代に蘇り、そして未来の音楽シーンを照らしていくことになるでしょう。

 それは、単純な進歩史観へのアンチテーゼでもあります。著者である柴崎氏は「『新しい音楽』であろうが、『過去の音楽』であろうが、それを聴くのは今現在を生きる私であり、あなたなのだ」と本の冒頭に記していますが、まさにその通り。過去(と認識される)の音楽も、聴くという行為を通じてしか認識しえないのであれば、それは“今”の音楽と言えるのではないでしょうか。その聴くという行為を通じて初めて、音楽は立ち上り、有機的に相互作用しあうのです。

 いま最前線を走るミュージシャンたちは、その有機的な活動をまさに行っている“音楽生命体”。丁寧に彼らの来し方を紐解くこの本はいわば“音楽ゲノム計画”と言えます。

 なんだか書けば書くほど、この本の本当の魅力を伝えきれない気がしてきますが「音楽を聴く」ことが好きな方には絶対に読んでいただきたいです。素敵な音楽との出会いがたくさん詰まった1冊です。

『MUSIC GOES ON 最新生活音楽考』

柴崎祐二 著 栗原 論 写真
ミュージック・マガジン社 1,980円

Column

週末何しよう? 過ごし方5選

興味あることは沢山あるけど、「To Do List」じゃ重すぎる、スローなウィークエンドにしてほしい。そんなあなたのために、ゆるーい週末の過ごし方ガイドをCREA編集部が5つピックアップしてみました。

もちろん、今週末は部屋でゆっくり寝て過ごしちゃう、なんてのもOK。だって、週末はまた来週もやってくるんだから。

2021.08.19(木)
文=CREA編集部