《テーブルに君の丸みのマスクかな》

 芸能人の才能を査定するバラエティ番組『プレバト!!』で、俳句の才能を開花させたフルーツポンチ・村上健志さん。なかでも、2回目の出演で披露したこの「マスクの句」は人気が高い。村上さんは初の著作『フルーツポンチ村上健志の俳句修行』の取材で、17の句会を訪れたが、参加者には「マスクの句からファンです」という俳人も。『プレバト!!』効果で一躍俳句界の有名人になった村上さんは、どんな気持ちで句会に向かったのか。

「最初はめちゃくちゃ緊張しましたね。番組でちょっと上手いとか言われてても、いざ、上級者たちの集まりに行ったら、『ほらできないでしょう?』みたいな、そういう場所かと思って……。でも実際に行ってみると全然そんなことなかったです」

 句会当日に題材を探しながら句作する「吟行句会」や、その場でお題を出す「席題」のある句会ではやや苦戦した様子。しかし得意ジャンルである宿題のお題(兼題)がある句会では、《避寒地のパンクのままの一輪車》が、一句しか選ばれない特特選に選ばれるなど、その実力とセンスを遺憾なく発揮する。

「《避寒地の~》は、これはなかなかいいのができた! と思いました。句会に参加すると、やっぱり取られたい(選ばれたい)んですよ。会によって傾向が違うから、『今回はちょっとこういうのも入れておこうかな』という句も入れつつ、自分が好きなスタイルのものも投げていく。僕はやっぱり、日常の1コマから物語が浮かんでくるような句が好きですね」

 句会では、提出された句について参加者が批評しあい、時には激論が交わされることもある。

「『俳句甲子園』に出てた人とかは、信じられないくらい喋るのが上手いです。『俳句甲子園』はディベートの部分もあるので。選んだ理由とかを聞かれるのは正直、怖いんですけど、句会って、ひとまず出してみて、参加者の反応を見る場でもあるみたいなんですよ。出した句に『季語はこっちがよかったかも』とか意見をもらって、修正したものを賞に出したりする。漫才やコントのネタも、初出しが完成じゃないですよね。お客さんの前でやってくうちに、だんだん研ぎ澄まされていく。そういう感覚と一緒だと思います」

2021.06.10(木)
文=「週刊文春」編集部