芸人たちがイス取りゲームをする。ひとり座れなかった芸人が、座っている芸人を指名し、イスに書かれた「大喜利」「ギャグ」「モノボケ」「1分トーク」「歌」などのジャンルで対戦するというのが『千原ジュニアの座王』(関西テレビ)だ。勝ち残るためにはあらゆる種類のお笑い力が必要。その総合力が試される番組だ。関西ローカルで約4年にわたり放送されていたが、初の全国ネットの1時間特番が実現した。そのため、番組常連組に加え、『M-1』『R-1』『キングオブコント』『THE W』という4大賞レース番組の歴代王者らを含む15人の豪華メンバーが集結。彼らを揃えるため、収録は他の番組とかぶらないよう午前10時から行われたという。

 最初にイスに座れなかったのは、フルーツポンチ・村上。彼は迷わず「モノマネ」のイスに座る阿佐ヶ谷姉妹・江里子を指名した。多くの番組で「ダメ」なキャラに焦点をあてられがちな村上だが、最近は「チープものまね」というネタを“発明”し、この番組を中心に披露して評判になっている。この日も浜田雅功ならぬ「浜田Wi-Fi功」に扮し「結果発表~!」の言い方で「ネット環境~!」と叫び爆笑をさらう。審査委員長のブラックマヨネーズ・小杉をして「衝撃を受けました」と言わしめ勝利をもぎ取った。ゆりやんレトリィバァvs阿佐ヶ谷姉妹・美穂の『THE W』王者対決、ゆりやんvsハリウッドザコシショウの『R-1』王者対決、ロバート・秋山vs友近という普段はユニットで即興コントをしたりしている憑依型コント師同士の対決などワクワクする夢の対戦が次々と実現していく。

 番組常連組のR藤本は『ドラゴンボール』のキャラクター「ベジータ」になりきる芸人。リリー、盛山と見取り図を続けて撃破すると、「ギャグ」で秋山と対戦。全国的な知名度や格では圧倒的に秋山が上。しかも、秋山が得意とするギャグだ。だが、藤本が圧倒。一般的にはアップセットといえるが、この番組ではそう思わせないだけの安定感が藤本にはある。同じく常連組で「武将様」というキャラが人気のミサイルマン・岩部は、『R-1』『M-1』2冠王者の霜降り明星・粗品の首を獲る。さらに、202勝26敗・優勝43回という成績を誇り「座王の鬼」と呼ばれる笑い飯・西田も危なげなく生き残る。

 番組初登場の全国的人気芸人たちも見せ場を作りつつも、それらを制し、「鬼」西田、「ベジータ」藤本、「武将様」岩部という番組トップ3といえるメンツがキレイに最後まで残る初の全国ネットとして理想的な展開。「あー! もうイヤやねん、この仕事!」と勝敗を決める審査委員長の小杉が頭を抱える名勝負の数々は『座王』ならではの魅力を余すところなく見せつけた。

INFORMATION

『笑いの総合格闘技!千原ジュニアの座王』
フジテレビ系 スペシャル番組
https://www.ktv.jp/zao/210504.html

2021.05.27(木)
文=てれびのスキマ