100年の時を刻む回船問屋で かつての賑わいに思いを馳せる

 江戸時代から明治30年頃まで、港町・岩瀬は北前船の中継地として栄えたことは、前回お伝えした。当時の建物が多数残されている美しい町は、日本の文化発信の場としても海外からも注目されている。その見どころをいくつかご紹介しよう。

 まずは、岩瀬地区のメインストリート、岩瀬大町通りへ。ここには明治時代に建てられた古民家や土蔵群が立ち並んでいる。国指定重要文化財として保存されている建物もあれば、レストランやギャラリーなど、別の用途で使われている建物もある。

 岩瀬エリアの廻船問屋の五大家のうち、森家と馬場家の屋敷は当時のまま保存されていて、入場料を支払って見学することができる。入場料はたったの100円。両家共通券なら180円だ。

 明治11(1878)年頃に建てられた「北前船廻船問屋 森家」では、館長の15分ほどのガイドツアーもある。広間の一画に「半畳」の畳を作って商売「繁盛」を願う語呂合わせや、金庫の中の隠し引き出しなど、ユーモアたっぷりに説明してくれて楽しい。館内には古いかんざしや壁掛け時計などが飾られ、大きな金庫が当時の繁栄ぶりを彷彿とさせる。

銘酒「満寿泉」でほろ酔いに 他では手に入らない希少酒も

 岩瀬は、酒造りの町としても知られている。富山が世界に誇る銘酒「満寿泉」を作っている桝田酒造店があるのだ。岩瀬大町通りには「満寿泉」に特化した酒店「沙石(させき)」があり、他では手に入らないような希少酒を買うことができる。有料で試飲もできるが、その種類、なんと約100種類! お酒好きは外せないお店だ。

 ほかにも、同じ通り沿いに、国内外の様々なアルコールドリンクを販売する「酒商 田尻本店」もある。大きなセラーにずらりと並ぶ蔵元直送の日本酒、焼酎、直輸入のワインなどのボトルは圧巻だ。驚いたのは、ベルギー取材の際に飲んだ、日本人が醸造している唯一のベルギービール「欧和」もあったことだった。

 岩瀬大町通りより1本海側の道沿いにあるのは「富山港展望台」。かつては行き来する船を見守ってきた、港町ならではの灯台だ。今は展望台として、自由に見学できるようになっている。高さ20メートルの展望室からは富山湾の対岸にある能登半島が一望でき、東側からは岩瀬の町並みと、その先の立山連峰を望む。

北前船廻船問屋 森家

所在地 富山県富山市東岩瀬町108

沙石

所在地 富山県富山市東岩瀬町93
電話番号 080-2962-6683
https://www.instagram.com/sh.ashi8445/

酒商 田尻本店

所在地 富山県富山市東岩瀬町102
電話番号 076-437-9674
http://www.tajirisaketen.co.jp/

2021.02.27(土)
文・撮影=たかせ藍沙