「誰かの夢を応援する」と“逃げてしまった”20代

 教師の父から2回だけ、反対されたことがある。1回目は、中学・高校を通してやっていたソフトボールを大学で辞め、演劇サークルに入った時。2回目は、社会人時代に同棲を始めた時だった。

「大学のソフトボール部のノリが合わなくて数ヶ月で辞めようとした時、『残される側の人の気持ちも考えなさい』って言われたんですよね。でも、何度考え直しても『どうしてもやりたい!』と、演劇の方に行ったんです。

 
 

 その後、大学を卒業してすぐミュージシャンの恋人ができたんですが、私はその時、演技を諦めて彼の夢を応援しようとしたんです。千葉の里山に引っ越し、農業しながら出版社に通って、自分が大黒柱になって……。でも何年か経って、結局私は自分の夢を追いかけることになり、関係は終わってしまいました。

 

 父親からは経済的な不安から同棲に反対されたんですが、この時も「どうしてもそうしたいから」って突き進んだんですね……。でも、今振り返ってみても、やってみなくちゃわからないというか、転んで傷をつくって初めて身をもって学べることがあると思っています。

 自分の夢を他人に託してしまうと、だんだん相手をコントロールしようとしちゃうんですよね。無意識に、よかれと思って。当時の私は彼に、ああしなよ、こうしなよと指図していたかもしれません。そのことに対して、すごく反省があります。

 今ならあの時の私に、『自分が頑張れよ。人に言わないでさ』と言いたいですね」

 
 

 『ナイルパーチの女子会』でも、栄利子が主婦ブロガーの翔子を意のままにしようとある思い切った行動に出るが、それは“ヤバイやつ”の話ではなく、山田さんの経験のように案外誰もが、しらずしらずのうちにやってしまっていることなのもしれない。

一人で生きるのは不安だけど

 山田さんは世間への関心が薄い翔子にも共感するところがあるという。

「今回演じた翔子と自分はよく似ていて、私も昔から自分のことばっかり考えてしまうタイプなんです。周りと比べないこともそうですが、それは周囲がどうなってもいいみたいな思いとスレスレなんですよ。

 
 

 振り返っても、自分の弱さや無神経さでいろんな人に迷惑をかけてしまったなと思います。だから、こうして役者としていろんな境遇の人を演じることで、自分のことばかりじゃなくて他者に目を向けたり、世界や人との関わり方を訓練させてもらっているような気がするんです」

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番組名:まだ間に合う「ナイルパーチの女子会」
日時:20日(土) 16時00分~
「今からでも楽しめる『ナイルパーチの女子会』」がBSテレ東にて放送されます。
1~2話のダイジェストと#3を一気見して、20日の21時に備えよう!
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写真=鈴木七絵/文藝春秋

2021.02.16(火)
文=小泉 なつみ
写真=鈴木七絵