年間水揚げ量日本一の銚子に伝わる伝統工芸「大漁旗」

 屏風ヶ浦のある銚子半島は、関東の最東端。黒潮と親潮が交わる沖では潮に乗って魚たちが集まり、利根川河口付近は豊かな藻場が広がっています。そのおかげで2020年、銚子は年間水揚げ量日本一! これは10年連続の快挙です。

 そんな日本一の港町・銚子には、千葉県の伝統的工芸品に指定されている“萬祝式大漁旗”、いわゆる大漁旗を描く職人さんがいらっしゃいます。

 江戸時代の文化文政の頃から続く「額賀屋染工場」の8代目・宮澤紀年さんは、この道60年以上のベテランです。

 もともと大漁旗は江戸時代末期、通信手段として船名などを書いた、のぼり旗を漁船に掲げていたのが始まり。陸で待つ人に無事に帰ったことを遠くから知らせるため、また、大漁の時は誇らしげに甲板に何本もののぼり旗を掲げて、入港したそうです。

 明治期に入り、船の大型化と共に、縦長ののぼり旗から横長の今のスタイルに変わっていきました。

 そして昭和30年前後から、文字だけだった旗に変化が。銚子では鶴亀や宝船などを描いた“萬祝着”(漁師さんの晴れ着)の図柄を取り入れた、鮮やかなデザインへと変わっていきました。そして、昭和49年に千葉県伝統的工芸品に指定されたそうです。

 今も宮澤さんは畳三畳ほどの大漁旗を一枚一枚、手描きするそう。漁関係に限らず、節句や結婚式、誕生日など、おめでたいこと全般に贈られ、暖簾やのぼりを描くこともあるとか。

 店内には、大漁旗をモチーフにした文庫本用ブックカバーや房州うちわ、コースターといった小物も販売しています。お土産にしても喜ばれそう。

 話は戻って、屏風ケ浦。本家の、英国にあるドーバー海峡の“ホワイトクリフ”とはどんなところだろうと、ネットで調べてみました。白い断崖が延々と続く、どことなく屏風ヶ浦と似た絶景。

 自由に渡航できる日が来たら、ぜひ実物を見てみたいです。

屛風ヶ浦

●アクセス JR銚子駅から千葉交通バス名洗・千葉科学大学線「千葉科学大学マリーナ前」バス停下車、徒歩3分。または銚子駅から車で約11分
●おすすめステイ先 別邸 海と森
https://www.umitomori.jp/

古関千恵子 (こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/4世紀あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/

Column

古関千恵子の世界極楽ビーチ百景

一口でビーチと言っても、タイプはさまざま。この広い世界に同じ風景は一つとして存在しないし、何と言っても地球の7割は海。つまり、その数は無尽蔵ってこと? 今まで津々浦々の海岸を訪れてきたビーチライター・古関千恵子さんが、至福のビーチを厳選してご紹介します!

2021.02.13(土)
文・撮影=古関千恵子