ガラスの天井に阻まれて
秀才が集まる研究者の世界でさえ、価値観が前近代的すぎる日本という国。
そんな「男社会」で、小保方晴子さんは成功の階段を駆け上った。それがフェイクな砂上の楼閣の階段であっても、割烹着を着て、まつエクをした彼女が歩くランウェイの最前列には、彼女を後押しする権威ある男性たちが陣取っていたのだろう。
男性社会のガラスの天井に阻まれて表舞台から消えたように見えつつ、正拳突きで鮮やかにガラスをぶち破ることができることを、私たちに見せてくれたようにも思える。
小保方さんが成り上がるために使ったのは…
「STAP細胞事件」の周辺を取材した私は、ミステリー小説『モテ薬』を書いた。
どんなに強力なウィルスでも撃退する免疫細胞の研究をしていた美人研究者が、異性を強烈に惹きつける物質を偶然に発見、その効果から「モテ薬」と呼ばれ、世界中から「世紀の発見」ともてはやされる。だが、その論文通りに実験しても再現できなかったことから研究不正なのではないかと大騒ぎになる。そして殺人事件が起きる――。
小保方晴子さんが成り上がるために使ったのは、その才能なのか? それとも「モテ薬」だったのか?
女性が才能を遺憾なく発揮し輝ける社会は、万人にも優しいはず。女性が、優しさ、包容力、美しさ、その女性ならではの魅力を全開にして生きられない社会は不幸だ。真の「一億総活躍社会」その到来を願ってやまない。女性の自殺率が上がっているというニュースを聞くにつけ、改めて心からそう思う。
2020.11.24(火)
文=旺季志ずか