恋人の指輪のサイズを取るために 口紅で魚拓
![©石川啓次/文藝春秋](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/3/-/img_b313b4fcecd3a3d4d61a4359eccc4ef6222343.jpg)
香取 はい(笑)。あと、4話だっけ? 恋人の指輪のサイズを取るのに、口紅で魚拓みたいなのを取ろうとして、笑っちゃうところ。あれが僕はすごく好きです。
三谷 僕が脚本に書いた行動は、セリフと違って僕の中のイメージに過ぎないんですが、それを、肉体を使って成立させられる俳優さんは本当に限られていると思うんです。
指輪のサイズを測るために、彼女の寝ている指を口に咥えて、その大きさを口で保存して、そこに口紅をつけて魚拓みたいに紙に写そうとする。その直前に舎人は笑っちゃって、またやり直しになるんです。
![主演・香取慎吾(左)と脚本/監督・三谷幸喜 ©杉山拓也/文藝春秋](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/3/-/img_431cce305b2c7601a64dd5d71b5c8b7a121796.jpg)
香取「思わず笑っちゃう」ってことは最初台本には書いてなくて、三谷さんが稽古の最中、口を紙につける直前に「笑っちゃってください」みたいにポロっと言ったんですよ。そしたら、僕のこの三谷さんの言葉を即座に理解できる特殊能力みたいな部分が……。
三谷「あ、こういうことなんだ!」と(笑)。
香取 そう! ビビッと痺れて「こういうことなんだ!」と。
![©石川啓次/文藝春秋](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/3/-/img_03177a456d3e89a5c5c29b9054eb81da217699.jpg)
――長い付き合いの中で、おふたりの間には目には見えない共通言語があるんですね。
三谷 というか、この方の感性だと思うんですけど。
香取 確かに、あの間は難しいですよね。口の形を紙に写そうとしたら、そんなことに必死になってる自分の現状全てにおかしくなって、笑ってしまう。そうすると、それまで必死でキープしてきた口の形が解けちゃうんだから。
三谷 それで、魚拓に失敗したことに気付いて、「しまった」という顔に瞬時になんないといけないしね。あれは、見所のひとつです。
香取 しかも、結構長い尺をひとりでやってるんですよ(笑)。
2020.09.23(水)
Text=Yoko Kikuchi
Photographs=Takuya Sugiyama, Keiji Ishikawa
Styling=Kayo Hosomi, Kan Nakagawara(CaNN)
Hair&Make-Up=Tatsuya Ishizaki, Megumi Tatsumi