#195 Inubosaki
犬吠埼(千葉県)
房総半島の最東端、犬吠埼。ちなみに、「崎」ではなく「埼」。崖が海に突き出ている状態は「埼」なのだそうです。
犬吠埼周辺の砂岩は、約1億2,000万年も前に堆積した地層。なんと恐竜が闊歩していた白亜紀に形成されたものです。
その大昔、このあたりは水深が浅かったそうで、海岸へ下りて岩場に近づくと、波や潮流が海底の砂を巻き上げて作った地層の模様を間近で見ることができます。
白い砂岩と黒い泥岩が交互に積み重なった層や、嵐の時にできるという海底のデコボコを残したもの、アンモナイトの化石や海岸付近の植物の化石が混じっていることも。こうした岩場を「白亜紀浅海堆積物」というのだそうです。
そして犬吠埼の突端に立っている真っ白な犬吠埼灯台が、とても美しいこと!
完工したのは1874年(明治7年)のこと。日本の“灯台の父”と呼ばれるイギリス人の灯台技師、リチャード・ヘンリー・ブラントンによって建てられた、西洋型第一等灯台です。日本で24番目に点灯された灯台になります。
建設時、イギリス人技師は建材のレンガを、質の悪い日本製ではなくイギリスから輸入しようとしたそうです。それを日本人の灯台技師が「国産でなくては!」と、良質の土を探し回り、ようやく県内で発見。19万3,000枚もの国産レンガを使った灯台が完成しました。
当初は石油灯だったそうです。その後、あれこれと試しつつ、今は400ワットの電球を使って約36キロ先の沖まで照らしています。
灯台の完成前は、地元の漁師さんたちにとって、海が明るく照らされたら魚が逃げてしまうのではないかという不安があったそうです。
けれど、夜の海に光が当たればプランクトンが集まり、それを狙って魚もやってくるものです。翌年はカツオが大漁で、漁師さんたちは「灯台のおかげ!」と、大喜びしたとか。
2020.05.16(土)
文・撮影=古関千恵子