政府主導のアルコール消毒液製造

 マスクと同時に店頭から消えたのが75%のアルコール消毒液だ。こちらも政府主導で、防疫期間専用製品として、食品メーカー等に製造を委託

 製糖を主とした食品を製造する「台糖」は、飲料用ペットボトルに、酒メーカーの「臺灣菸酒」は、酒瓶に消毒液を詰めて販売。

 こちらも健康保険特約薬局を中心に限定発売され、なかなか手に入らない時期が続いたが、3月7日(土)あたりから流通量が増えて手に入りやすくなり、同時に雑貨店で詰め替えに使う空のスプレーボトルが並び始めた。

 また、一般メーカーの消毒用ジェルや除菌シートは、価格にバラつきはあるものの、日ごと在庫が増え、どこでも買えるようになっている。

意識が高い人たちの防疫習慣

 危機意識が高い人々の徹底した予防対策は、平時ならば“そこまでやらなくても……”といわれる潔癖性の人の習慣そのものと言っていい。

 エレベーターのボタンは綿棒やティッシュで押す、または指を曲げて関節で押す。買い物かごの持ち手は、ペーバータオルを巻いたり、使い捨て手袋をしたりして直接触らないようにする。

 買ってきたものは除菌ティッシュで拭く帰宅後は洋服を外で脱ぎ、2時間以上空気に晒すか、すぐに洗濯に回す。帰宅したら即シャワーという人も少なくない。シャワーが無理でも顔と眼鏡を洗う

 スマホはジップロックに入れて帰宅後は袋を捨てるか、マメに除菌する。そうした防疫ティップスがLINEで回ってきたりもする。

 欧米の人々は“少しでも菌に触ったらアウト!”という感覚で生活しているようだが、市中感染の恐れが低い台湾でも、この発想にならう向きがある。

 商店街の様子はというと、デパートは、入口にサーモグラフィーを設置しているほか、手指のアルコール消毒を推奨。私が知る限り、最も厳重なのが、外資系スーパーの家樂福(カルフール)。

 入口での検温とマスクのチェックにはじまり、アルコール消毒液の促進と使い捨てビニール手袋のサービス、レジにはビニールカーテン、店員さんはフェイスシールドを着用……と、現在の感染状況からすると、やや物々しい対策が取られている。

 つい先日、マスクを忘れた中年男性が入口で止められ、しばらく粘ったものの、結局入れてもらえなかったのを目撃したときは、スタッフとお客さんの双方を守ろうという店側の本気度を感じた。

 個人的には、家樂福にはセルフレジがあるのがありがたく、できるだけ人の手に触れずに商品を持ち帰れるところが日頃から気に入っている。感染が拡大している地域は、ぜひ早急に取り入れるべきシステムだと思う。

 以前、テレビでタレントが「家族といえども、同じ歯磨きチューブは使えない」と発言してドン引きされていたが、今必要なのは、まさにその感覚。市中感染が心配な今の日本では、外出時には、このぐらいの潔癖感覚が必要なのかもしれない。

 日本では「あの人、やりすぎじゃない?」という陰口が叩かれがちだが、コロナウイルス対策については、人目を気にしている場合ではない。人目を気にせず、自分なりの感染対策を取れるのは、台湾の長所かもしれない。

2020.05.17(日)
文・撮影=堀 由美子