9月までにマスクの国内生産を 1日3,000万枚まで増産

 新型コロナウイルスの影響で、世界中が「#stayhome」の日々を送っています。
 

 日本よりも長く自宅にこもる、海外のかたがた。休業補償やたまるストレス……。その暮らしぶりは?

 2020年3月10日(火)に全土が外出禁止となったイタリア。

 CREA WEBに記事を寄せていただいているイタリアはフィレンツェ在住のコーディネーター大平美智子さんに、最近感じたことや暮らしぶりをアンケート形式で答えていただきました。

» 「ロンドン」篇
» 「イタリア」篇①
»
「カナダ」篇


Q1. お住まいの場所を教えてください。

 イタリア中部のトスカーナ州、フィレンツェ近郊の小さな田舎町です。

 フィレンツェへは東京の空港からローマ経由で14時間弱、時差はマイナス7時間(夏時間)。

 ファミリー層が中心に住んでいますが、なぜかうちの周囲にはDINKS多し。

Q2. 外出できる条件や頻度など規制ルールは?

 外出禁止令は、実は4月に何回か解禁を予定されたのですが、5月4日(月)まで延長されることに。

 学校は3月5日(木)から休校。

 環境問題に関心の高い娘は現在オンライン授業でみっちりやっておりますが、学校再開の予定は延びに延びて、ようやく4月27日(月)の政令で、新学期である9月から再開が決定! そして、このまま進級してしまうことに!!! 

 最近までは生活必需品の買い出し、病院への通院など緊急以外は外出禁止。いずれの場合も行動理由を明記した許可書と身分証明書を持参しなければなりません。

 行動範囲は同市内の店に限るので、他市の店に行くのも違反

 ちなみに同じ市内でも他市でも、別世帯への訪問も禁止。近くの近親者の家に行くのでさえもご法度です。

 違反の場合は罰金400~3,000ユーロ(約46,400~34万8,000円)です。

 町中で以前のように人々が集まっておしゃべりする光景はどこにもなく、店前でみんな1~1.5メートルの距離を置いて話す状況。

 おかげさまで会話は筒抜け(笑)。

 挨拶のキスやハグの習慣がイタリア社会からも消滅しました。

 最近になって営業できるお店が増えたこともあり、市民の気持ちもちょっと緩んできたよう。

 先日銀行に行った主人は「今週から街の駐車場に車が増え、人が多くなった」と言っていました。

 友人のご主人が先日フィレンツェ市内に行ったおり、道端で暴言を吐くような人々が増えていてびっくりした、と語っていました。

 日頃、バールでおしゃべりするなど社交好きなイタリア人にとって、自宅監禁のような状態はかなり精神的に負担なのでしょう。

 先行き不安もあるでしょうし、精神科医たちのネットカウンセリングはパンク状態らしいです。

 行動制限中、また解禁後のメンタルケアが重要になるでしょう。

 買い物は、基本的にひとりずつしか行けません。

 どのお店の前でも互いに距離を置くソーシャル・ディスタンスを守るお客さんでいっぱいです。

 私の住む町に唯一あるスーパーcoopは、幸いにも現在は整理券制なので長蛇の列はありません。

 ほかのエリアは整理券制でないので、炎天下を長蛇の列で待っている間に熱中症で倒れてしまう危険もある、と友人がぼやいていました。

 coopは入場制限されて8人ぐらい。

 まず整理券を取り、その後Facebookで今の順番を随時配信してくれるので、お買い物がしやすいです。

 私はまだ2回しか行っていませんが、1回目は2時間待ち、2回目は4月初旬の復活祭前だったので買い出し客が多く、なんと6時間待ちでした!

 整理券があって良かった。

 ごく最近はオンラインで順番待ちが予約可能に。

 でも少数枠しかないため予約できるのは宝くじ的確率……。

 大手スーパーのネット予約宅配もあるのですが、これもフルブッキングで、予約至難!

 でもスーパーは比較的、感染確率が高いとも聞くので私はあまり行くこともなく、上記の2回のみでした。

 そのほかに、わが家は野菜中心の食生活なので野菜は八百屋さんから宅配、ミネラルウォーター20ケースもまとめて届けてもらいます。

 乾燥物や穀類豆類、ワイン、洗剤類は常日頃から備蓄傾向なので順次、消費中。

 あとは近所の小さな食材店でパンや生ハム、チーズなどちょこちょこ買い。

 また、ここにはお買い物ボランティアのグループがあります。

 スーパーや薬局へ電話注文すると、同日か遅くとも数日後に注文品を配送してくれます。主に高齢者や外出困難な家庭が優先ですが、一般家庭にも届けてくれるとか。

 車での移動は、家族でも乗り込むのは2名まで。

 しかもドライバーは前席、もうひとりは後部座席に座らなければなりません。

 マスクと手袋は今もかなり品薄ですが、以前よりは入手しやすくなりました。 

 女性はほとんど以前から着用していますが、男性はマスクも手袋もしてない人が多い。

 店頭に消毒液を置くお店が約7割と全店ではないうえに、感染率も死亡率も男性のほうが高いというのに……心配です。

 つい最近は、外出時にマスク着用が必須という首相令が全国で施行されました。

 トスカーナ州では4月頭、各家庭に4枚ずつ使い捨てマスクを無料配布。

 またスーパーや薬局で保険証を提示すれば1回4枚、ひとり計30枚まで無料マスクをもらえるようになりました。

 着用指示をもっと早くに出せば良いのに、と思いましたが、入手できない人も多かったので混乱を避けるためだったのでしょうか。  

 4月28日(火)の国営放送「RAI 1」のニュースによると、マスク製造へ転向した国内企業がこの2カ月で108社に増え、外出禁止など段階的な規制緩和が開始される予定の5月4日(月)までに、1日1,200万枚のマスクを生産予定。9月までに1日3,000万枚へと増産の見込みだそうです。

 その前日27日(月)にはイタリアのジュゼッペ・コンテ首相が、新型コロナウイルス感染拡大防止策の一環として、マスクを1枚0.55ユーロ(約60円)の一律価格にするとコメントしました。

 ほとんどが使い捨てのマスクなので、娘は使用済みのマスクがどのように処理されるのかを心配しています。

Q3. 日本ではテレワークが増えましたが、仕事の環境は? 

 今、営業可能なお店は、スーパーや薬局、食品店、タバコや切手など販売のタバッキ、銀行、郵便局、農園資材店、園芸店、畑仕事などオープンエリアの作業できる農園など。

 4月14日(火)から書店、子供服店などが営業OKとなりました。

 仕事は生活必需品製造業と、上記の店以外の職種の人はテレワークを推奨。

 また営業できていても、従業員数は制限して作業しています。

 営業できる郵便局でも、小さなところは閉鎖。

 大きな郵便局では、窓口が隣り合わないようにスタッフの距離を置いて働いています。

 窓口のカウンター50センチぐらい手前に、美術館の展示作品の前にあるようなテープが貼ってあり、局員に色々と手渡すのが大変!

 日本のお勤めのかたがたも、さぞやご不安な気持ちで日々過ごされているのでは……。

 ただ、今はできるだけテレワークに徹することが大切だと思います。

 早くから感染が確認されていても、日本の感染者数は他国に比べると数値が極端に低いのは、検査数が圧倒的に少ないことが最大要因と言われていますが、何よりもまず、日本ならではの2つの習慣、挨拶と衛生管理が功を奏しているのでは。

 距離を保って挨拶するし、握手ですら稀です。

 日頃からマスクをして手を清潔に保ち、除菌グッズは日常生活の全般に溢れ、帰宅すれば玄関で靴を脱いで、毎日お風呂に入る。

 日本の習慣は他国にない危機管理とも言える素晴らしい習慣だと思います。

 私はフリーランスでメディアや企業関連の仕事に携わっていますが、メディア系の仕事はすべて9月以降に延期になりました。

 企業系の仕事はもともとテレワークが多いので、特に影響はありません。

Q4. 休業補償はどのようなもの?

 食の国イタリアでの飲食店やエンタテインメント系業態はアイコン的存在。

 本当に大変な事態になってしまいました。

 イタリアではパンデミック令というのが必要に応じて随時発布されていて、記憶にあるところだと、まず3月に行動規制が施行されてすぐ、前払い制の社会保険料金を納めている国民にそれぞれ600ユーロの補償がされました。

 従業員の多くは自宅待機となるため、一時解雇補償金と、自粛が終わるまでは月収の80パーセントが社会保険機構から支払われることになりました。

 また、家やお店の賃貸料支払いが猶予される法律も施行。

 職種によっては国からの優先的な貸付を銀行経由で申請できるよう。

 でも飲食店の多くは非正規雇用も多いので、たくさんの人が困難に陥っている可能性が高いです。

 4月27日(月)に発表された最新の政令によると、5月4日(月)から全国のオフィスと工場、11日(月)からはさまざまな店舗の営業再開が解禁に。

 でも飲食店はテイクアウト部門のみの解禁で、本格的な営業はなんと6月1日(月)から、しかも条件つき! その内容とは、

――飲食店の各テーブルは2メール間隔で離し、その間に植物やガラスなど衝立を置く

――カウンター席は使用禁止

――従業員は全員マスクと手袋着用

など。これだと営業を再開できても、客席が半減し、結局のところ売り上げも激減。小さな店は存続も危うくなるでしょうし、外食産業全体が悲鳴を上げることに。

 条件が厳し過ぎて「非現実的」と揉めており、業界関係者たちが国や各州を相手に今、強く抗議をしています。

2020.04.30(木)
文・撮影=大平美智子