ママ、そのスーパーに行かないで
娘による"地球を守る十戒"
かくいう我が家の15歳の娘も、もれなくエコ少女に変身! 外出時には水筒にエコバッグ必携、旅行にはマイコップ&ストロー、カトラリーまで持参します。
グレタとも仲良しのフランシスコ教皇も9月、プラスティックによる海洋汚染を回避するよう協力しましょう、とTVや各メディアを通して世界に呼びかけました。
まさにプラスティックフリーこそ、今どきエコの至上命題。
しかし普通の家庭の主婦には、これが一番やっかいな問題です。
プラスティック素材の製品は、一般生活者の日常に姿形を変え、毛細血管のようにあらゆる箇所に入り込んでいて、私たちは無意識のうちにプラスティック製品を消費しているからです。
イタリアの場合、家庭の飲料水はペットボトル入りのミネラルウォーターが一般的です。
スーパーで売られている食品はプラスティックや発泡スチロール包装され、それがどれも大きくかさばるものばかり。
液体洗剤の容器もガッツリ大きいものが多く、使い捨て食器類の充実ぶりも相当なもの。
毎日のプラスティックゴミの量は半端ではありません。
ここは軽薄短小な良品よりも、まだまだ見た目のお得感が優先な市場。
南イタリアの一部のエリアでは夏場、水不足で食器が洗えず、場合によっては使い捨て皿やコップをひと夏使い続けなければならないという、やむを得ぬ環境があるのです。
我が家では、子から「親への厳しい指導」が毎日続きます。
昨日もスーパーで買い物して帰宅すると、娘がエコバッグの中身をチェックして仁王立ち。
「ママ、バナナはパック入り以外なかったの?」と詰問され、
「オーガニックものはパック入りしかなかったの」とたじろぐ母。
「じゃあ、そのスーパーには行かないで」
「…………」
家から一番近いお店だから困ります。
食品用ラップで包まれたものや、パック入りの惣菜類も却下。そうなると一般のスーパーでは買えるものがほとんどないお手上げ状態です。
ごみがゼロのスーパーなど、イタリアには全くもってよその国のお話……。
果たしてこんな微細な活動で地球環境は好転するのか、と短慮な母はだんだん投げやりな気持ちに。
「ママは私たちの未来はどうでもいいんだね」
と睨まれるたびに、大人の地球人として「日常、できるところから始める」しかないと、自分に言い聞かせる毎日です。
ちなみに娘主導の"地球を守る十戒"はご覧の通り。
1. プラスティック製品でないものを買う
2. プラスティックゴミの少ないものを選ぶ
3. 動物性タンパク質は買わない。外食しても週1回まで
4. 合成液体洗剤やソープ類はNG。固形石鹸、エコ洗剤の量り売りはOK
5. 外出時は水筒必携。場合によりストロー、コップ、カトラリーも持参
6. 長く使える良品を選ぶ。ユーズドも活用
7. ファストフードやファストファッションは買わない
8. 使い捨てグッズは買わない
9. 節エネルギーを心がける
10. 低エネルギーな交通手段を選ぶ
これはモノや暮らしを大切にしていた私たちの親の時代、半世紀前ごろを想像すれば良いのかしら。
「人間の便利さ」から「地球の健康優先」をする生活への道のり、これいかに……。
大平美智子(おおひらみちこ)
イタリア専門コーディネーター&ライター
美術大学卒業後、グラフィックデザイナーを経て渡伊。四半世紀過ぎた今でもイタリア文化への心酔は変わらず美術、美食、イタリア流ホリスティックライフをテーマに雑誌、テレビなど各媒体でイタリア情報発信中。
2019.10.11(金)
文=大平美智子