伝統工芸とデザインの力で 地方創生に貢献!

 「華山1914文創園區」は戦前の酒工場の跡地を利用したカルチャースポット。広々とした敷地内には数多くのショップがあります。

 なかでも注目したいのがここ「太洋的風 by Kamaro'an」です。

 「Kamaro'an(カマロアン)」は、台湾東部の花蓮県港口集落に暮らすアミ族の伝統工芸を用い、スタイリッシュな日用品やバッグを作る新進気鋭のブランド。2015年に三人の若者によって創業されました。

 港口集落では地元の女性たちが中心となり、数十年前から伝統工芸を復活させる取り組みが進められてきました。

 大学院で工業デザインを学んでいた張雲帆さんと劉立祥さんが研究プログラムの一貫としてここを訪問。これがブランド誕生のきっかけとなりました。

 彼らは伝統工芸の素晴らしさに魅せられると同時に、デザインをより磨き上げ、台湾内だけでなく、海外のマーケットでも販売展開していくことを考えました。

 こうすることで村人たちにより多くのものを還元でき、村の活性化にも繋がると思ったからです。

 そこで同じ理想をもつアミ族の林易蓉(Tipus Hafay)さんと共にブランドを創業。

 ブランド名の「Kamaro'an(カマロアン)」はアミ族の言葉で「(ここに)暮らしなさいよ」という意味をもちます。

 「都会に暮らす若者たちが部族の文化に誇りをもち、集落へ戻りたいと思える環境を作りたい」という願いが込められています。

 「Kamaro'an」では地元の女性たちと話し合いながら商品づくりを進めています。最初に手掛けたのは、ゴザに用いていた植物「輪傘草」を利用したランプシェード。

 優美な曲線を描くランプシェードは海外の展示会で瞬く間に話題となりました。

 そして、次なる主力製品として生み出されたのが、持ち手の部分に伝統的な織物技術を取り入れたバッグや小物入れでした。

 洗練されたデザインでありながらも、アミ族古来の文化が感じられる商品として、欧米でも高い評価を得ています。

 ショップでは自社ブランド以外にも、花蓮や台東に暮らす台湾原住民族の優れたクラフト製品を扱っています。普段の暮らしの中でも使いやすいものが多いので、ゆっくりと、お気に入りを探してみましょう。

※台湾では「原住民族」というのが正式な表記になります。「先住民」は「すでに滅んでしまった民族」を意味するので、ここでは現地の文化を尊重し、「原住民族」という言葉を用いています。

2020.03.31(火)
文・撮影=片倉真理