現地に残る源義経の伝説
江戸時代の旅行家・国学者の菅江真澄は1793年に「ごくらくの 浜のまさごし ふむ人の終に仏 うたかひもなし」と歌を詠みました。特に白砂の美しさに心奪われたようです。
ちなみに、菅江真澄はその前年の1792年にも仏ヶ浦を訪れました。その際、牛引きの少年に聞いたのが、源義経の伝説。
源義経が仏ヶ浦から蝦夷地に橋を架けるべく、建材である木材を牛に運ばせました。が、あまりの木材の多さに牛はすっかり疲弊し、倒れてしまいました。
結局、橋を架けることはできず、その木材がすべて石となってしまったのだそうです。
また、浜に立つ大正の文豪・大町桂月の歌碑「神のわざ 鬼の手づくり佛宇陀 人の世ならぬ処なりけり 呆れ果て 驚きはてて佛宇陀 念仏申す外なかりけり」も、仏ヶ浦への畏怖の念が伝わってくるようです。
仏ヶ浦の桟橋近くには地蔵堂があり、浜にはいくつかの地蔵さまがいます。
浜の奥にある「極楽浜」を賽の河原、津軽海峡を三途の川に見立てたそう。浜辺に小石を積んだ石塔も、いくつか見かけました。
人は亡くなると、この浜を通ってから天界に召されたと信じられているのだそうです。これは、恐山と同様です。
ガイドさんによると、仏ヶ浦は恐山の入口なのだとか。また、かつて恐山の修験者はこの浜までの過酷極まりない悪路を踏破し、行き着いた末を最後の修験場としたという話もあります。
ちなみに、佐井港へレンタカーで向かう際、カーナビに従って走っていたら、いつのまにか恐山の道なき森でひとり迷子に。これも、何かの因果⁉
人知を超えた、仏ヶ浦の不思議な光景。そして恐山。目に見えない世界とのつながりが、ここにはあるのかもしれません。
仏ヶ浦
●アクセス 青森県下北半島の佐井港から観光船で片道約30分。仏ヶ浦で30分滞在(ガイド付き)し、計90分の観光船が便利(牛滝港からも観光船あり)
問い合わせ先
佐井村観光協会 0175-38-4515
https://saikanko.sakura.ne.jp/
●おすすめステイ先 ケビンハウス
http://saikanko.sakura.ne.jp/inn/kebin-html
Column
古関千恵子の世界極楽ビーチ百景
一口でビーチと言っても、タイプはさまざま。この広い世界に同じ風景は一つとして存在しないし、何と言っても地球の7割は海。つまり、その数は無尽蔵ってこと? 今まで津々浦々の海岸を訪れてきたビーチライター・古関千恵子さんが、至福のビーチを厳選してご紹介します!
2020.03.14(土)
文・撮影=古関千恵子