1月期の連続ドラマもそろそろ最終回が近づいてきた。

 今期のドラマは医療ものが多く、「病院の治しかた」(テレビ東京)、「恋はつづくよどこまでも」「病院で念仏を唱えないでください」(TBS)、「アライブ」(フジテレビ)、「トップナイフ」(日本テレビ)と主だったもので5本もあった。

 人気ドラマは「医療もの」か「ミステリー」と言われて久しいなか、ミステリーは「10の秘密」(フジテレビ 制作はカンテレ)と「テセウスの船」(TBS)の2本だけだ。ほかに刑事ものとして「絶対零度」(フジテレビ)があるが、ここではミステリーにカウントしない。

 2作のうち注目されたのは圧倒的に「テセウスの船」で、視聴率は2桁キープで後半順調にあがっている。「10の秘密」は6%台をうろうろ。はっきりと明暗が分かれている。

 人気ジャンルの「ミステリー」に挑戦したドラマがたった2本のなか、ここまでの違いが出てしまったのはなぜなのか。「10の秘密」と「テセウスの船」を徹底比較することで、いま、ドラマに何が求められているか見えてきた。


「だましあい」のカンテレと「タイムスリップ」のTBS

 「10の秘密」は、昨今、人気の「だましあい」をモチーフにしたもので、離婚した夫婦が、娘の誘拐事件を機に対峙し、彼らのみならず、関わる人々の過去の秘密が次々と明るみになっていく。出演者は向井理、仲間由紀恵、仲里依紗、渡部篤郎、佐野史郎ほか。

 オリジナル脚本で、脚本家は、草彅剛主演のヒットドラマ「銭の戦争」「嘘の戦争」などを手掛けた後藤法子。演出家は「家政夫のミタゾノ」「セミオトコ」のほか、映画監督もしている宝来忠昭や「銭の戦争」「嘘の戦争」の演出などを務めた中西正茂。制作はカンテレ。

 一方の「テセウスの船」は「タイムスリップ」もの。殺人犯の息子として生きてきた主人公が過去にタイムスリップ、事件の真相を探り、未来のために過去を変えようと奮闘する。出演は、竹内涼真、鈴木亮平、榮倉奈々、上野樹里、安藤政信、麻生祐未ほか。

 漫画原作で、脚本家は「アリスの棘」などの高橋麻紀、演出は「花より男子」で大ヒットをとばした石井康晴や「グランメゾン東京」の山室大輔など。制作はTBSと大映テレビの共同制作だ。

 では2本のミステリードラマ、要素をひとつひとつ比較してみよう。

2020.03.12(木)
文=木俣 冬